吉田和生さん 個展「TB」
hpgrp GALLERY TOKYOにて、元フォトふれ 吉田和生さんの個展が開催されます。
TB
©Kazuo Yoshida
下記リンクより
hpgrp GALLERY TOKYO から吉田和生の新作展「 TB 」をご案内いたします。吉田は昨年、群馬青年ビエンナーレ大賞を受賞、作品シリーズ「Air Blue」は文化庁メディア芸術祭推薦作品に選出されるなど現代美術の領域で評価を高める若手写真家です。吉田は時代性・社会性を反映する場所を撮影地に選択する一方、日常的な風景の写真を撮影しています。デジタル技術などの実験的プロセスを介入させることで、非日常的なイメージへ変換、社会的なメッセージを含む「写真」というメディアに定着しています。作品の随所に表れる「青」という色は、海や空を連想させ、心地よい感触をもたらしてくれる一方で、見えない何かを暗示するような畏怖を観る者に印象付けます。約1年振りとなる吉田和生の個展をぜひご高覧ください。
いま私が使っているパソコンは非常に重い。この「重さ」は、もちろん物体としての質量のことではなく、その動作の「重さ」のことである。
当然のことながら、パソコンそのものが感情的な理由でその動きを遅くしているわけではない。要因は二つある。ひとつはパソコンの処理能力の低下――データや常駐プログラムによるCPU・メモリ・ストレージの消費、OSの不具合、本体の劣化など。そしてもうひとつは周辺環境の変化である。
今日のパソコンは、ネットワークを経由してデータをやり取りし、外部機器と接続・共有されることを前提として使用されている。これは、進化を続ける外部への適応能力(互換性)を更新し続けていくことが使用者に課せられるということだ。つまりパソコンの「パーソナル」な側面と、外部との関係性はその価値(value)を語るうえで不可分なのである。
2000年代以降、パソコンの均質化によって、その市場では性能=数値=価値という等号があらわになる。企業間競争の恩恵に与った我々にとって、一昔前と比べるとそれは冗談のように「お手軽」なものとなった。私は取り急ぎ「彼」の延命のため、2TB(Tera Byte)――約1万円のHDDの購入を図る。これが現在のテラの価値(worth)である。
テラ(tera)とは国際単位系における接頭辞のひとつで、基礎となる単位の一兆倍の量であることを示す。その語源はギリシャ語で「怪物」、ひとつ下の単位であるギガ(giga)は「巨人」、さらにその下のメガ(mega)は「大きい」という言葉に由来する。古来より巨人とは、人間の倍ほどの大きさから雲を衝くまでの巨体の怪物とされる。つまり「怪物」とは、可変的な存在なのである。
我々にとって、自己を規定する身体が浮き彫りにする思考・感情のスケールから逃れることは古来より変わらず困難なことである。かつての恐れを克服するための技術は、その克服そのものが恐れとなるというパラドックスを明らかにしている。いま、この鈍重な身体をもって成し得ることは、光速を超え、膨張し続ける怪物を「再び」組み伏すことではなく、みずからを「リヴァイアサン」化し、各人の胸中に生きる根本原理に従い、多少の趣味をもって、この世界(terra)を評価することではないか。
―吉田和生
<アーティストトーク>
9月7日 19:30~20:30
出演:吉田和生、天野太郎(横浜美術館主席学芸員)
モデレーター:星野太(美学・表象文化論)
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会期:2013.8/30 - 2013.9/23
時間:11:00~19:30
休廊:月曜日
会場:hpgrp GALLERY TOKYO
〒 150-0001 東京都 渋谷区 神宮前5-1-15 CHビルB1F
リンク:http://hpgrpgallery.com/tokyo/