

精巧に手縫いされた布のオブジェを起点に、自身の身体性を中心的なモチーフに据え、写真、映像、アートプロジェクトなど多領域わたる作品制作を続ける片山真理(1987年埼玉県に生まれ、群馬県に育つ。現在は群馬県を拠点に活動)。片山の作品は自伝的でありながら普遍的な共感を呼び起こし、社会が個人に課す「役割」や「かたち」が、私とあなたの境界線、そして“正しさ”をどのように形づくるのかを問いかけます。2025年には、英国のヴィクトリア&アルバート博物館のためのコミッションワーク(V&A Parasol Foundation Women in Photography projectの支援による)を実現。Yutaka Kikutake Galleryの六本木新スペース開設後のこけら落としとなる本展は、「tree of life」と題されたV&A博物館の新収蔵作品を含む片山の新作群を日本で初めて発表する機会となります。
本作「tree of life」は、片山が構築した鏡張りの空間で、彼女自身が被写体となった、十点に及ぶ写真作品です。手縫いのオブジェに囲まれ、鏡面に反射する彼女の輪郭は曖昧さが際立ち、それが鏡像であるのか、実像であるのかもはっきりしません。天と地、現実と虚像、内と外、自己と他者 - 鏡の生み出す反射が、全ての輪郭を曖昧にし、まるで増殖するイメージの生成が無限に繰り返されていくようです。キャリアの初期の頃より片山が抱き続けるデジタルイメージの可塑性や、複製性、終わりのない更新性への意識を深く反映する本作は、彼女がたびたび語る「所有されない身体」への接続の希求とも繋がっています。複数の四肢を持つ自身最大のオブジェ ― 全長20メートルにおよぶ - と共に行われたポートレート撮影は、全て片山自身の手によってシャッターが切られ、そこでは「撮る/撮られる」という関係性に根差した権力構造の様相もまた意識されています。片山が彼女自身の身体を「公共性」と共に語るのは、それが常に他者の視線や制度、社会的文脈によって方向づけられる存在であるからにほかならず、それは彼女の作品が担う「公共性」とも無関係ではありません。撮影され、客体化された自身の姿は、自分自身からさえも切り離され、社会的・身体的・感情的な現実が交差する場となって立ち現れます。無限の鏡の反射の中に浮かび上がる彼女の身体は、自己と他者の境界を問い、また同時に、循環・更新する所有者のいない身体として、その公共性を引き受けています。
一方、現在でも中判のフィルムカメラを使用し、多重露光もPhotoshopも使わずに、一度のシャッターで時間をキャプチャするという片山の手法は、針と糸で縫うことも含め、身体的かつ物理的な領域に深く根ざしているとも言え、本作「tree of life」で構築された鏡の空間での実践は、デジタルイメージが有する虚構性に対する距離感の取り扱いと共に、それらを身体と空間のレベルで現実化する試みでもあります。
「私」の身体は、一体誰のものなのか - 増殖する鏡の反射によってものごとの曖昧な境界線を示しつつ、役割やレッテル、様々なラベルを背負いながら今ここを生きることへと投じられた片山の眼差しは、そのまま画面に正対する鑑賞者それぞれにも向けられています。彼女の姿は、社会や世界、私とあなたの関係性、様々な顔や役割を持つ「私」と世界との連なりを深く問い続けています。しかし、無限の反射の中で歪み、攪乱された彼女の姿はまた、変容の象徴でもあります。画面に現れる像は、木の根っこや、枝になり、流れる川は血管にも似て、そして、それらは全て力強い生命力に満ち溢れているのです。
5年におよぶ構想の末に完成した片山真理の新作「tree of life」の試みをぜひご高覧ください。
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2026年3月19日(木) - 5月16日(土)
12:00 - 19:00 日・月・祝日休廊
Yutaka Kikutake Gallery Roppongi
106-0032 東京都港区六本木6-6-9
ピラミデビル 2F

この度Open Roomでは2026年4月16日(木)より5月20日(水)まで、田代つかさによる個展「Ghost,my ghost.」を開催いたします。
これまで写真を中心に、短歌や映像を用いた作品を制作してきた田代つかさ。
本展では、写真作品と、田代自身が詠んだ短歌を複合的に展示。それぞれ独立した作品でありながら、画や言葉の中に潜む、彼女が「幽霊」と呼ぶものを顕在化させる展示となっています。
日常の中に遍在する「見えていなかった」様々なものを、彼女の写真や言葉は半ば無意識的に捉えます。そしてそれらの「見えていなかった」ものがある種のおそろしさを伴って目の前に立ち現れる時、私たちの現実は今一度揺り動かされ、変容しうるのかもしれません。
“幽霊を撃ち、幽霊に撃たれる。
幽霊という言葉は、時に「見えないもの」「実態を持たないもの」を表す時に使われる。
現実から生み出されたイメージが目の前に現れた時、これまでの現実を暴力的に揺さぶってくる感覚に襲われる。不意打ちで見えていなかったものが見えてしまった瞬間は、
幽霊(のようなもの)を見たかもしれない、と心臓が一気に冷えていく感覚と近い。
一度見てしまったらもう見る前には戻れない。
いかに自分が見たいものしか見ていなかったのかを思い知らされる。
世界はおそろしい。
見えていないからといって存在しないというわけではない。
その存在に気づく入り口というのは前触れもなく訪れる。
わたしはわたしの幽霊が、わたしを穿つことを望んでいる。”
【Reception/トークイベント】
田代つかさと親交の深い写真家・篠田優、シンガーソングライター・oono yuukiを迎え、3名によるトークイベントを開催します。当日は作品映像の上映に加え、oono yuukiによる即興演奏も行います。
日時:4月16日(木) 19:00 –21:30
※トークは19時半〜予定
内容:トークイベント、即興演奏
出演:田代つかさ 篠田優 oono yuuki
料金:投げ銭制+1ドリンクオーダー
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会期:2026年4月16日(木)〜2026年5月20日(水)
休廊:日曜
時間:12:00-20:00 ※イベントに応じ不定休
入場:無料
会場:Open Room
住所:東京都渋谷区初台1-39-12 初台富士ハイライズ1F
※展示作品は販売いたします。
※作品集、グッズを販売予定です。

「TOPコレクション」展は、東京都写真美術館が収蔵する約39,000点の写真・映像作品をさまざまな切り口で紹介する展覧会です。
令和8(2026)年度第一期のテーマは、AI時代における「感触」。「感触」とは狭い意味での触覚だけではなく、「ものに触れて感じること」を指します。現代では人工知能(AI)の急速な社会進出によって、これまで人間に特有のものとされてきたさまざまな技術や能力の優位性が揺らいでいます。こうした時代背景においてこそ、真の人間力について考えることに意義があるはずです。このコレクション展では、文化、芸術に特有の共感覚や、感性的なコミュニケーション、想像力の可能性を考えます。「感じること」の重要性を説いた香港の武術家・俳優・哲学者ブルース・リー (1940-73)の言葉「Don’t think. Feel.(考えるな、感じろ。)」を手掛かりとして、当館の写真作品から五感を触発する作品を選んだ表題のセクションを中心に、短編小説集のように5つの小テーマで構成するオムニバス形式の展覧会です。
本展の構成
第1室「Don’t think. Feel.」
香港の武術家・俳優・哲学者ブルース・リー (1940-73)の言葉「Don’t think. Feel.(考えるな、感じろ。)」から着想を得たセクションです。リーは武術について「感じること」の重要性をシンプルな言葉で語りました。美術においても、身体を通して「感じること」によって、より豊かな作品体験が生まれます。マン・レイやエドワード・ウェストン、恩地孝四郎らによる触覚的な視覚表現や、田村栄〈多摩川の鳥〉(1954-60)、近藤龍夫〈湖北〉(1957-77)といった戦後日本の知られざる逸品を通して、ここでは「ものに触れて感じる展示」を体験することができるでしょう。
川村邦光氏(文化史研究・大阪大学名誉教授)の協力により、同氏の著作『家族写真の歴史民俗学』(ミネルヴァ書房、2024年)を展示化します。同書は19世紀から現代までの家族写真の構図や撮影背景を分析し、家族の社会表象について論じています。収蔵品の中から川村氏の論じた家族写真を中心に展示し、氏による考察のテキストをあわせて展示します。
川内倫子の写真シリーズ〈Illuminance〉(2011)と共に、令和7年度新規収蔵作品の《Illuminance》(2001-26)(同名の映像作品)、《M/E》(2022)(映像作品)を紹介します。光の「照度」を意味するこのシリーズは作家の代表作であり、2012年に当館で開催された個展「照度 あめつち 影を見る」において展示されました。川内は自身を取り巻く世界に目を向けて、一瞬、一瞬のうちに見出された光景を捉えます。その作品表現は、特定の時間や場所から解き放たれ、意識と無意識の間を漂うような、独特な時間感覚を見る者に与えます。
写真はなぜ人々の持つ記憶を刺激するのでしょうか。本セクションでは、見る人の記憶の奥に眠っていた感覚や感情を揺り動かす作品に着目し、関口正夫、田中長徳、稲越功一らによるスナップショットや、小林のりお〈ランドスケープ〉(1984-85)におさめられた都市の風景などを展示します。ここでは、かつてそこに確かにあった感覚や風景と邂逅するかのような、記憶装置としての写真について思索を深めます。
展覧会の終点となるこの部屋では、画面上に写るイメージの奥にある、作家固有の感性や感覚を探ります。写真固有の芸術表現を追求した中山岩太や後藤敬一郎といった戦前の写真から、森村泰昌、吉田志穂らの現代の写真まで、想像力に働きかける作品を取り上げます。作家の感性や感覚そのものに思いをめぐらすことによって、「感じること」のその先について考えることを試みます。
マン・レイ、恩地孝四郎、エドワード・ウェストン、田村栄、近藤龍夫、濵谷浩、北井一夫、 細江英公、吉野英理香、齋藤陽道、植田正治、影山光洋、深瀬昌久、アレック・ソス、川内倫子、 関口正夫、高梨豊、土田ヒロミ、河野浅八、アルフレッド・スティーグリッツ、中山岩太、 後藤敬一郎、北代省三、森村泰昌、吉田志穂 ほか

本展では、2012年から2023年にかけて、言語や文化の異なる土地での長期滞在を通して出会った風景や人物と向き合うなかで生まれた作品群を中心に紹介します。光や距離、沈黙のなかで生じる身体のわずかな変化に目を凝らしながら、時間をかけて被写体と向き合う彼女の眼差しは、場所や言語、肌の色といった差異を越えて、撮る者と撮られる者のあいだに生まれる流動的な相互関係が立ち現れる瞬間を捉えています。
近年の作品では、ポートレイトと風景を等価なものとして扱い、人間の身体を土地に蓄積された記憶と響き合う存在として、また風景を人の営みや時間の痕跡を宿すものとして捉えています。
山元の写真は、何かを定着させるための記録であると同時に、意味や解釈をあらかじめ閉じることなく、他者の記憶や時間を静かに受け止めます。本展では、そうした写真を前に、私たち自身が内に抱える時間や感覚がどのように呼び起こされ、写真の中に漂う気配と重なり合っていくのかを見つめる場となることを願っています。
13:00-19:00
Closed: Mon. Tue. *4/20, 21はオープン
PURPLE
〒604-8261 京都市中京区式阿弥町122-1 式阿弥町ビル 3階


