北野謙氏 出版情報
第27回東川賞新人作家賞を受賞した北野謙氏が総編集をしてきました福島評論集の最終巻、3巻目『破綻と彷徨』が刊行になりました!!
『破綻と彷徨』
<内容>
一章「東松照明」(1978年「特集フォトアート」掲載)
二章「破綻と彷徨」(1974年「特集フォトアート」掲載)
①時を越えた〈実人生の質〉/②高野直太郎/③安井仲治/④中山岩太/
⑤野島康三/⑥北海道初期写真群ー田本研造とその他ー
巻末に「あとがき」と「福島辰夫執筆歴」を収載。
(発行:窓社、責任編集:北野謙、編集:本尾久子、装丁:町口覚)
窓社:http://www.mado.co.jp/
3巻は福島氏が70年代に安井仲治、中山岩太ら戦前・戦中の作家を調査、研究したテキスト
「破綻と彷徨」を中心に構成しています。
当時福島氏はアノニマス(=埋もれた、無名の)という写真のあり方について関心をもち、
そうした過去の作家の再評価を目指しました。
本書に書かれた作家たちは、1930年代の日本という最低最悪の時代の現実のなかで、閉塞に
飲み込まれることなく、渾身の力でそれと向き合い、優れた仕事を残しました。福島氏は単
に「昔の作家だから」とか「当時としては斬新」といったそれまでの評価を批判し、彼等が
どのような現実と向き合うなかから生まれたのか、それがどれほどの困難を伴うことであっ
たかを丹念に検証します。
まだ日本では写真の美術館や研究機関もほとんどなかった頃の貴重な仕事です。
多くの作家は、その後も研究者によって研究され続けています。例えば安井仲治は2004年に
「生誕百年安井仲治ー写真のすべて」(渋谷区松濤美術館、名古屋市美術館)図録に、中山
岩太は2003年に写真集「中山岩太」(淡交社)にほとんどすべての図版と詳細なデータにま
とめられました。それらと福島氏の1974年「特集フォトアート」誌初出では、掲載写真のト
リミング、向き、タイトル、制作年、生前発表未発表など、異なる点が随所にあります。
この約40年間にご遺族も研究者も代替りされるほど時間が経ちました。本書はそれら研究の
変遷も鑑みて、一部の作家については各時代の情報の併記し、また関係者のご理解を得て他
ではみられない1974年「特集フォトアート」掲載の貴重な図版も再掲載しました。
写真点数144点。写真の強さが際立った1冊です。
「日本の写真」などとよく言いますが、ほんとうに「日本の写真」と言えるものはあるので
しょうか。もしもそれについて考えるとしたら、本書から現在に向けて考えてみてはいかが
でしょう。
福島辰夫さんは今年の日本写真協会功労賞に選ばれました。
北野謙
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<トークイベント>
細江英公(写真家)× 聞き手:北野謙(写真家、本書では編集を担当)
ゲスト(予定):福島辰夫(写真批評家)
日 時:10月8日(土) 18:30-20:00
場 所:NADiff a/p/a/r/t 店内
入場無料(予約不要) ※30名様以降は立見となりますのでご了承ください。
お問い合わせ:ナディッフ アパート TEL 03-3446-4977
リンク:http://www.nadiff.com/fair_event/fukushima_vivo.html
<ブックフェア> 「10人の眼」-「VIVO」の時代 1956-1962
福島辰夫写真評論集を読み解くために、ナディッフでブックフェアが行われます。
石元泰博、川田喜久治、東松照明、奈良原一高、細江英公ほかVIVO作家を中心に絶版写真集、書籍、図録などを展示・販売いたします。
日 時:9月23日(金・祝)-11月27日(日)
リンク:http://www.nadiff.com/fair_event/fukushima_vivo.html
<関連情報>
MEMにて、福島辰夫写真評論集をテキストにした現役の批評家による連続講座を予定。
mem-inc.jp/
<書籍情報>
第1巻〈写真を発見する世界〉
「世界認識の方法」としての写真について、写真史を俯瞰するテキストを集める。「個人像をめぐって」(1966)、「VIVOの時代」(1978)、「歴史は何を教えるか」(1961)など収載。
8月30日刊行 46版・ソフトカバー / 200頁 / 2,310円(税込)
第2巻〈「10人の眼」・VIVOの時代〉
1950年代60年代を福島氏とともに歩んきた東松照明、奈良原一高、石元泰博、細江英公それぞれの作家論や時代状況をつぶさにおりこんだテクスト群。さらに次の世代にあたる荒木経惟、森山大道についても触れた「極私と超国境の空間から」(1973)。他にエドワード・スタイケンインタビュー(1955)、「私のデモクラート、瑛九のデモクラート」(1999)など収載。
8月30日刊行 46版・ソフトカバー / 240頁 / 2,520円(税込)
第3巻〈破綻と彷徨〉
戦前、戦中の作家、安井仲治、中山岩太や田本研造、野島康三、高野直太郎について。これらの写真家が過酷で閉塞した時代のなかで、あの豊で深い写真をどうなし得たかを、丹念に検証し再評価した「破綻と彷徨」(1974)を中心に構成。福島氏の仕事のなかでも重要と思われるテキスト群。「東松照明」(1976)を収載。
9月下旬刊行予定 46版・ソフトカバー / 220頁予定 / 3,780円(税込)