中村征夫氏 展覧会「東京の海」
第12回東川賞特別作家賞受賞作家である中村征夫氏が、7月5日よりGallery A4にて展覧会を開催いたします。
-東京の海ー
©Ikuo Nakamura
ライフワークの東京湾をはじめ、水俣湾、諫早湾など、人と海との関係や、「命」を基本姿勢に取り組む報道写真家でもある中村征夫さんの写真の中から、「東京の海」にスポットを当てた写真を紹介します。江戸時代以前の東京は入江に囲まれた水際都市でした。現在の日比谷は、丸の内まで繋がる深い入り江で、海苔を乾かす「ひび」という竹の組みものが浅瀬に並んでいたことが地名の由来なのだそうです。現在は都市化が進み、身近にあった水辺もすっかり遠い存在になってしまいました。中村征夫氏は30年以上も東京湾の写真を撮り、その変遷を見守り続けています。中村氏の写真は、都市化が進み、高度経済成長期の影でヘドロにまみれ、汚染された海に、少しずつ、生物が帰ってきている様子を伝えます。近年は、温暖化の影響で熱帯魚が現れることもあるそうです。3.11の大震災で私たちは、大いなる地球の胎動の中に共に生かされ、その変動帯からの恵みを得ていることにあらためて気付かされたはずです。その地球の大部分、70%は海なのです。
中村征夫さんの写真をじっくりご覧いただくと、空き缶を住み家にするヤドカリ、コンクリートから、にょっきり顔を出すアカハタ、大きく口をあけるボロカサゴ、どれも地上の変動など、我知らじ、とたくましく生きている姿がうかがえます。観る人は、ひょうきんでたくましい魚たちが生きる海の魅力を知る一方で、陸上の人の暮らしの勝手を知るのです。私たちは、眼前の暮らしの快適さのみで、見えない多くの世界を忘れていないだろうか、、、と。高度経済成長期を経て、人が捨て続けた海に沈むヘドロや環境汚水は、やがて循環し、人間のもとに帰ってくるでしょう。
30年に渡る東京湾の水中写真を撮り続けた中村氏の写真からは、たくさんの問いが聞こえてきます。夏休みの時期に重ね多くの子ども達にも見ていただき、たくさんの発見をしていただきたいと思います。それと同時に地球全体のこと、生き物みんなのことも一緒に考えましょう。
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会期:2012年7月5日~8月9日
時間:10:00~18:00(最終日は17:00まで)
休館:日曜日・祝祭日
会場:Gallery A4
〒136-0075 東京都江東区新砂1-1-1 竹中工務店東京本店1F
リンク:http://www.a-quad.jp/index.html