展覧会「自然の鉛筆 技法と表現」
東京都写真美術館にて開催中の「自然の鉛筆 技法と表現」に、東川賞受賞作家 田原 桂一氏、杉本 博司氏、松江 泰治氏、植田 正治氏、荒木 経惟氏、深瀬 昌久氏、奈良原 一高氏、尾仲 浩二氏、また東川賞審査委員の山崎 博氏が出品しています!!!
「自然の鉛筆 技法と表現」
以下美術館HPより
当館では毎年テーマを設けて、コレクションから選りすぐられた名作をご紹介しています。今年のテーマは写真における「表現と技法」です。
ダゲレオタイプ(1839年)とカロタイプ(1840年)のふたつの写真術が発表されて以来、写真は常に「光学」と「化学」の変遷によって表現の幅を拡げてきました。本展では、写真における「化学」に焦点を絞り、プリント技法の変遷と表現、さらに印画紙の古典技法と現代表現や、モダニズムにみるカメラレス・フォトグラフィなどに注目。世界初の写真集『自然の鉛筆』や、世界最初のカラー写真『アジャンの風景、木と水の流れ』をはじめ、珠玉の名作180点を一堂に展示します。デジタル写真の浸透によりフィルムを知らない世代も増えている昨今、写真技法の変遷と、写真にしかできない表現の豊かさは、これから写真がどこに向かうのかという問いにヒントを与えてくれることでしょう。
■本展の見どころ
①東京都写真美術館が世界に誇る珠玉の名作180点を展示。豪華な出品作家ラインナップに注目!
②世界初の写真集、ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボット『自然の鉛筆』(1844-46年)を展示!
②写真とその表現を支える「技法」とのかかわりを、わかりやすい解説と名作で実感!
■主な展覧会構成
<第1章:紙の印画>
~タルボットからはじまる複製芸術の進化~
ウィリアム・ヘンリー・フォックス・タルボットのフォトジェニック・ドローイングをさらに進化させたカロタイプによって、紙の印画を基にする写真術の歴史は幕を開けた。カロタイプの優れたところは、アナログ写真のネガ・ポジ法の原型となる発明で、1枚のネガ像から同一のポジ像を複数得ることができる特質がある。しかし、発明当時の画像は不鮮明で画像も消えやすく、タルボットはこの技法にいくつかの特許を取得しため、使用も簡単ではなく、商業的成功を見ることはなかった。しかし、画像の階調のコントロールや紙の選択によって、作者の意図や心情を反映させる余地があり、不鮮明な輪郭が逆に柔らかな効果を生み出すことから、一部の芸術家たちはこの技法に注目した。
このネガ・ポジ法という考え方は、その後、ネガをつくるネガ現像法と、ポジをつくる印画技法とそれぞれ独自に発展させることになる。そして、印画技法は産業革命の発展と同調するように、商業的成功をおさめていく。印画紙の生産は工業化され、会社組織の工業製品として改良が重ねられ、安定した製品を大量に生み出した。単塩紙、鶏卵紙、プラチナ印画、ゼラチン・シルバー・プリント、ピグメント印画、カラー写真の印画など、時代のニーズに応えるように数々の技法が生みされていく。
紹介する技法:フォトジェニック・ドローイング/カロタイプ/単塩紙/鶏卵紙/プラチナ・プリント/ゼラチン・シルバー・プリント/カーボン・プリント/ゴム印画/ブロムオイル/ウッドバリータイプ/フォトグラビア印刷/フォトグラム/ソラリゼーション/ネガ・フォト
<第2章:金属・ガラス印画>
~世界にひとつだけの写真~
写真の発明としてはダゲレオタイプが世界初とされるが、カロタイプのように一回の撮影で何枚もポジ像がつくれる複製の機能を持たなかった。発明当初からしばらくの間は、細部の描写が優れていたことと、フランスが国をあげて、この技法を推進したこともあり、カロタイプよりも圧倒的な人気を博し、「ダゲレオタイプ・マニア」が出現するほど熱狂的反応を巻き起こした。特に商業的な肖像写真の分野で発展した。肖像写真のための営業写真館が登場した。そのなかでも、アメリカのマシュー・B・ブレイディはニューヨークに肖像スタジオを開き商業的にも成功し、作業工程を分業化するなど、大規模なプロダクション・システムを作り出した。
ダゲレオタイプは扱いに手間がかかり価格も高かったことから、アンブロタイプやティンタイプが、新たな代用として登場する。画像の精細の点では劣ったが、特にティンタイプはガラスのように割れることがなく、丈夫で軽量なため、郵送されることもあり、身近なものとして受け入れられた。
紹介する技法:ダゲレオタイプ/アンブロタイブ/ティンタイプ
<第3章:カラー写真の展開>
~カラー表現の追求-不動の地位を築くまで~
モノクロ写真が発展を遂げる一方で、カラー表現の追及も始まっていた。研究者たちは、自然界のすべての色彩は赤、青、緑という三原色の組み合わせであると考えた。1861年にスコットランドの物理学者ジェームズ・クラーク・マックスウェルが、格子縞のリボンを写した3枚のランタンスライドのポジを重ね合わせ、カラー写真を生み出した。また、同時期にフランスで、ルイ・デュコ・デュ・オロンが同じような実験を試みエリオクロミィを発表している。しかし、彼らの試みは実用的なカラー写真として成功したとは言い難かった。
カラー写真の商業的成功は、1904年にフランスのオーギュストとルイのリュミエール兄弟が「オートクローム」を考案するまで、果たされなかったといっていいだろう。コストが高くて露光時間も長く、撮影後の画像をビュワーで見なければならなかったが、意外にも多くの人に受け入れられた。しかし、この技法も色彩の自然さという点で改良の余地を残していた。
真の意味で、カラー写真が実用化されたといえるのは、1935年にイーストマン・コダック社のコダクロームという三層式のポジ・フィルムが発売されてからであろう。それ以後、カラー写真は大衆の間で圧倒的シェアを獲得し、その後、色素転写方式、拡散転写方式、発色現像方式、銀色素漂白方式などが開発され、不動の地位を得ていく。
紹介する技法:エリオクロミィ/オートクローム/色素転写方式印画/拡散転写方式印画/発色現像方式印画/銀色素漂白方式印画
■主な出品作家
W.H.F.タルボット/デヴィッド・オクタヴィアス・ヒル&ロバート・アダムソン/エドュアール=ドニ・バルデュス/ジュリア・マーガレット・キャメロン/ルイス・キャロル/下岡 蓮杖/ギュスターヴ・ル・グレィ/日下部 金兵衛/ティモシー・H.オサリヴァン/ギューム=ベンジャミン・アマン・デュシェンヌ・ド・ブローニュ/ピーター・ヘンリー・エマソン/ジャン・グルーバー/田原 桂一/アーヴィング・ペン/ロール・アルバン=ギヨー/永江 博/ハインリッヒ・キューン/大久保 好六/ナダール/アルフレッド・スティーグリッツ/ポール・ストランド/マン・レイ/ラスロ・モホイ=ナジ/瑛九/アルベルト・レンゲル=パッチュ/アウグスト・ザンダー/エドワード・ウエストン/アンセル・アダムス/ウォーカー・エヴァンズ/ロバート・フランク/ウィリアム・クライン/ゲリー・ウィノグランド/ダイアン・アーバス/ブルース・デヴィッドソン/マーティン・ムンカッチ/リチャード・アヴェドン/アンリ・カルティエ=ブレッソン/ジャック=アンリ・ラルティーグ/マリオ・ジャコメリ/エーリッヒ・ザロモン/森山 大道/杉本 博司/ヨセフ・スデック/石元 泰博/松江 泰治/ユーサフ・カーシュ/林 忠彦/木村 伊兵衛/植田 正治/東松 照明/荒木 経惟/深瀬 昌久/マシュー ・ブレイディ ズ・ スタジオ/ルイ・デュコ・デュ・オロン/ハリー・キャラハン/山沢 栄子/ウィリアム・エグルストン/ジョン・ディヴォラ/ロバート・ラウシェンバーグ/チャック・クローズ/フランコ・フォンタナ/ポール・フスコ/ナン・ゴールディン/シンディ・シャーマン/リチャード・ミズラック/マーティン・パー/奈良原 一高/山崎 博/尾仲 浩二 ほか
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会期:2012年7月14日 ( 土 ) ~ 9月17日 ( 月・祝 )
休館:毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館)
料金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
※ただし、9月17日(月・祝)は65歳以上は無料(受付時、要証明書)
会場:東京都写真美術館
〒153-0062 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
リンク:http://syabi.com/contents/exhibition/index-1595.html
9/17までの会期となりますので、お見逃しなく!!!