第30回東川賞受賞作家展
第30回東川賞受賞作家展
30周年を記念する今年の東川賞受賞作家展は、フィンランドからヘルシンキ・スクールの立役者といえるヨルマ・プラーネンを迎えます。北極圏に住む少数民族の写真アーカイブを用いたシリーズや、肖像画に映じる反射を実験的に写し取ったシリーズ。写真のもつ歴史的想像力と、光と影からなる物理的側面をプラーネンの写真は浮きぼりにします。
国内作家賞の野口里佳は、新作も交えた展示によって、「写真」について問いかけます。写真の原理といえる光と、それを受け止める支持体としてのスクリーン。実験的ながらも、繊細な色彩と実感を伴う作品は、それらが織りなす関係を軽やかに読み解く糸口を示すでしょう。
新人作家賞の石塚元太良がアラスカとアイスランドで撮影したのは、都市にエネルギーを供給するため、自然のなかを延々と突き進む長大なパイプラインです。円柱の人工物と雄大な自然の対比が、現代社会に対する批評性をもつとともに、未知なるランドスケープを生み出しています。
北海道にゆかりのある作家と作品に贈られる特別作家賞。札幌を拠点に活躍する酒井広司は、北海道の風景をいかに撮るかという問題に取り組んでいます。「偶景」シリーズでは、北海道の各地で偶々出会った光と場所において、風景が自らを開示する「沈黙の空間」、「風景の原型」を写真に収めよう試みます。
飛彈野数右衛門賞は、地域に根差した活動を顕彰するものです。徳山ダム計画で水に沈む運命となった故郷の人々、自然、祭り、風習など、あらゆるものにカメラを向け、記憶の消滅に抗い続けた増山たづ子の写真群は、ノスタルジーにとどまらない現在性を有しています。
デジタル技術が進み、インターネット上でも日々無数の写真が飛び交うなか、写真の定義も境界も、大きく揺らいできています。そうしたなか、東川賞ならではの多彩な5人の作品は、写真というメディアの原点でもある「光」と「記録」の在り方について、私たちに再考を促すでしょう。
東川賞受賞作家展ディレクター 楠本亜紀

海外作家賞受賞作家 ヨルマ・プラーネン氏




国内作家賞受賞作家 野口里佳氏




新人作家賞受賞作家 石塚元太良氏




特別作家賞受賞作家 酒井広司氏




飛彈野数右衛門賞受賞作家 増山たづ子氏




インディペンデンス展



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会期:2014年8月9日(土)~9月3日(水)
時間:10:00~17:30 会期中無休
料金:町内100 円、町外200 円
会場:北海道<写真の町>東川町文化ギャラリー
〒071-1423 北海道上川郡東川町東町1丁目19番8号
ホームページ:http://photo-town.jp/index.html