エレナ・トゥタッチコワさん 展覧会「After an Apple Falls from the Tree, There is a Sound」
フォトふれ 展覧会のお知らせ。
本日よりPOETIC SCAPEにて、エレナ・トゥタッチコワさんの展覧会が始まります。
After an Apple Falls from the Tree, There is a Sound
林檎が木から落ちるとき、音が生まれる
©Elena Tutatchikova
以下リンクより
POETIC SCAPEでは、2015年5月13日(水)よりエレナ・トゥタッチコワ展『After an Apple Falls from the Tree, There is a Sound -林檎が木から落ちるとき、音が生まれる-』を開催いたします。
クロストークには美術史家/美術評論家/東京藝術大学先端芸術表現科教授の伊藤俊治氏をお迎えします。
林檎が木から落ちるとき、音が生まれる。それはどんな音だろう。
私にとってそれは、子供のころの記憶がわき起こる瞬間、あるいは誰にも気づかれなかった自然の静寂の音。そして、写真を見返す時に気づく音。あるいは、みるものが初めて気づいた、常にあった音かもしれない。
このシリーズには、私の師である大学教授や友人の家族がモスクワ郊外のダーチャ(夏を過ごすために作られた、庭や菜園のあるサマーハウス)で暮らした夏の風景が写されている。
ダーチャというトポス抜きにロシア人と自然の関係を考えることはできない。ダーチャには、東ヨーロッパ平原に生きる現代ロシア人の自然に対する哲学が凝縮されている。ダーチャでの暮らしには自然との調和がその根底にある。それは、菜園作りに始まり、ベランダから雨を眺めながら瞑想する、あるいはお茶を飲むといった、人間の根源的な幸福を保ちながら営まれる、半ば修行的なものである。朝早くに起きて、太陽の光で暖まった水で体を清める。そして簡素な朝食を食べて、仕事に向かう。土いじりの仕事か、あるいは都会から持ち込んだ仕事かは人それぞれ。仕事が終わったら、家族や近所の人たちと会話の時間。夏の一日は長い。ダーチャでの会話は夜更けまで続く。
ダーチャで交わす会話は周囲の風景さながら。ゆっくりと流れる川もあれば、どこまでも広がる草原もある。太陽が沈む頃には、深くて終わりのない森がより鮮明に見えてくる。どこまでも広がる、山のない平原に住むロシア人は、待つことが多い。山に囲まれた暮らしを送る人々のように、山を越えたらまた別の世界が広がる、あるいは次の山が見えてくるといった、来たるべき可能性を求め続けるのではない。ただ次のこと、次の季節が来ることを黙々と待つのに慣れている。長い冬の後、短い春、そして暑い夏が来るのを待ち、そして夏には、庭の木と静かにささやき合いながら秋が来るのを待つ。その次にはまた長い冬が来ることを知りながら。
毎年、夏が終わろうとしている時、林檎が生まれ、木から落ちる。そして土になってまた次の夏生まれ変わる。子供たちが成長して大きくなる。そしてまた新しい人間が誕生する。人間と木が、お互いを見つめ合いながら生き、地面になり、生まれ変わる。毎年同じこと、全く同じことの繰り返し。
人間の生きる空間は、人間の身体や精神に絶対的な影響を与える。人間は自然のごくわずかな一部にすぎず、いくら自然を支配しようとしても、決して自然の中心に立つことはない。
私は、数年に渡って郊外にあるダーチャを撮影し、自分の故郷の原風景は、ここにある事に思い至った。そのとき、林檎が木から落ちた瞬間に生まれる音に、私は初めて気がついた。
--Elena Tutatchikova
<クロストーク>
エレナ・トゥタッチコワ×伊藤俊治(美術史家/東京藝術大学教授)
2015年5月23日(土)17:00-18:30
要予約、定員20名
参加費:1000円(1ドリンク付)
*お申込みはリンクより
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会期:2015年5月13日(水)~6月14日(日)
時間:木~日 13:00-19:00
水曜日 16:00-22:00(ナイト営業)
休廊:月・火
会場:POETIC SCAPE
東京都目黒区中目黒4-4-10 1F
リンク:http://www.poetic-scape.com/