黑田菜月さん 展覧会「けはいをひめてる」
フォトふれ 展覧会のお知らせ。
Midori.so2Galleryにて、黑田菜月さんの展覧会が開催されます。
けはいをひめてる
©Natsuki Kuroda
以下リンクより
そこに何かある、そんな「けはい」を表せたら
「すこし怖いんだけど、もうすこし近づいてみたい」
そんな気にさせられる場所ってありますよね。目に見えなくとも、そこには何かがあるんじゃないか。そういう感覚をなんとか表せたらとおもって、今回展示する「けはいをひめてる」をつくりました。
この作品では、公園のなかの小さい池や水たまりといった、水のある光景が多く写っています。水辺は「ふち」というか境界というか、まさに気になるけれど近づきがたい雰囲気を持つ場所の象徴におもえるんです。
水とともに、子どもの姿もたくさん写っています。子どももまた「あいだ」にいる存在で、わたしたちとはちょっと違ったものの見方をしていると思われがちですよね。何かに異様に固執したり、なんでもないものをやたら怖がったりとか。
たとえば母親が留守のとき花瓶を割ってしまったら、この世の終わりかというくらいとんでもないことをした気になりませんでしたか? 自分だけの小さい世界にいるあの特別な感覚や、ヘンな思考回路。かつて自分も持っていたはずなのに、ほとんど忘れてしまっているそんな感受性を、もういちど思い起こしてみたい。彼らの見ているものや視線を写すことによって、観る人にもういちどあの世界を垣間見てもらいたいんですね。
手元に置いた作品は、記憶や感情を想起させてくれる
とはいえ、そういう考えのもとに撮れば、写真の画面に「眼に見えないものが写る」などと信じているわけじゃありません。写真は、人に何かを思い出させる装置です。そこに写っているものを見ることで、自分のなかに眠っていたイメージを膨らませたり想起したりすることができる。そこが写真のおもしろさだとおもいます。
見えないものが写るのではなくて、そこにないイメージをそれぞれの観者がおもい描ける。その楽しさを、作品を通して味わってもらえたらうれしいです。実際、わたしが写真にのめり込んでいったのも、撮った写真を見ることで、自分の記憶やこだわり、ものの見方や考え方なんかを発見できるのが楽しかったからでした。
写真作品を手元に置くと、同じような体験がきっとできますよ。見るたびに自分の考えが揺れ動いたり、何かを思い出したりといったことが、日々起こるはず。しばらく部屋に置いていたのに、今日いきなりある細部に気づいたり、急に画面が懐かしさを帯びて見えてきたりといった発見は、いつまでも尽きないとおもいます。
画面が変化しているわけではもちろんない。けれど、観る側の心持ち次第で、毎回違った記憶や感情を呼び起こされていく。だから、そういう見え方の変化が、ずっと持続していくのでしょうね。
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会期:2015年8月28日(金)〜9月6日(日)
時間:11:00〜20:00
会場:Midori.so2
東京都港区南青山3-13
リンク:http://provoke.cork.mu/