糸崎公朗氏 展覧会「フォトモの世界」
東川賞受賞作家 展覧会のお知らせ。
エモン・フォトギャラリーにて、糸崎公朗氏の展覧会が開催されます。
フォトモの世界
エモン・フォトギャラリーより、4月21日から開催される写真家・糸崎公朗展『フォトモの世界』のご案内致します。 糸崎公朗1965年長野県生まれ、東京造形大学卒業。中学は生物部、高校は美術部に属し、大学ではデザインを専攻。また前衛芸術に強い関心を寄せ、路上をテーマに写真で記録する様々な表現活動を続けています。 展覧会タイトルの「フォトモ」は写真とモデルを組み合わせた氏による造語。70年代初頭に赤瀬川原平らの芸術概念「超芸術トマソン」(存在がまるで芸術のようでありながら、その役にたたなさ・非実用な物体、主に不動産を示す)が当時学生を中心に広がり、糸崎もまた影響を受けた一人として自身の創作活動に取り込んでいったのです。1992年から始まった「フォトモ」は、開発が進む中で昭和の面影を残す東京下町の路上を記録しています。そのプリント写真を使い、江戸時代におもちゃ絵として楽しまれた錦絵「立版古(たてばんこ)」の形式を取り入れ、撮影からコラージュまでのすべてを手仕事で行っています。 「フォトモ」は96〜04年まで雑誌「散歩の達人」に連載されて好評を博しました。アナログの味わいがあり、人々に町歩きの見所を示唆する教材的な意味を持っていたのです。しかし一般的なペーパークラフトと一線を画すのは、糸崎の「フォトモ」が現実を誇張したパース写真で表し、建物や人を折り重なるように構成した視覚効果にあるでしょう。観る者の想像力を掻立てるフォトコラージュのユニークな表現形態として観ることができるのです。 ノスタルジーと温かみを持った本作品群は、92年から続く原版として制作された作品を中心に約30点をご紹介します。また香港で撮影された最新の立体作品も展覧を予定しています。
アーティストステートメント
フォトモは平面である事が前提とされる写真を立体化した作品だが、これを再び平面に押し戻したのが今回メインとなる展示作品である。これは96~04年に雑誌『散歩の達人』に連載していた版下原稿として製作したものだ。フォトモを最初に発表したのは93年、池袋西武百貨店内のアトリエヌーボーという小スペースだった。この時、同じ池袋の東武百貨店では葛飾北斎展が開催され、そこで北斎作のフォトモにそっくりな立体作品が展示してあり仰天した。それは立版古という江戸時代のペーパークラフトで、パーツが並んだ木版画を切り抜いて組み立てると、浮世絵の世界が立体的なミニチュアとなって出来上がる。私は隔世的に優良な遺伝子を受け継いだことを確信した、と同時に直接的にも影響を受け、フォトモのパーツをバラバラに分解し平面にレイアウトした版下原稿を『散歩の達人』編集部に持ち込んだ。この連載原稿は全てフィルムからのプリントを手作業で精密に切り貼りしている。今はすべての作業がパソコンに置き換わり、文字通り「失われた技術」になった。この作品の一部は14年に東京都写真美術館に収蔵され、17年のコレクション展に出品された。この時同じ出品者の写真家山本糾氏は、私の作品に対し驚きをもって「キチガイだ」と評してくれた。思えば私は写真というものの外部に出ることで、写真そのものの根本を捉え直そうとしていたのである。
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2017/04/21 fri - 05/20 sat
Opening Reception 04.21fri 18:00 Start (Free)
エモン・フォトギャラリー
東京都港区南麻布5-11-12