森村泰昌氏 展覧会「森村泰昌、ゴッホの部屋を訪れる」
東川賞受賞作家 展覧会のお知らせ。
京都国立近代美術館にて、森村泰昌氏の展覧会が開催されます。
森村泰昌、ゴッホの部屋を訪れる

ゴッホがアルル時代を過ごした部屋を描いた《寝室》にもとづき、ほぼ実寸大に作られたレプリカ「ゴッホの部屋」は、2016年の個展で発表された《自画像の美術史》シリーズの映画の撮影セットとして用いられました。森村によるファン・ゴッホ像は、自分を見つめ続けた画家の苦悩にせまりながらも、芸術家像そのものが物語化され大衆化されていく過程を鋭く突いたものとなっています。ファン・ゴッホをめぐる日本人の夢の余韻に浸りつつ、森村にならってファン・ゴッホ気分を体験してみてはいかがでしょう。
「ゴッホの部屋」について
森村泰昌
絵を見るだけではなく、絵の中に入ってみたい。誰しも一度は、そんな空想、してみたことがあるのではないでしょうか。
私は、「絵の中に入ってみたい」という想いを、もう30年以上も持ち続け、それを実際に芸術というジャンルで実現してきた芸術家です。
今回御覧いただく「ゴッホの部屋」、これは2年ばかり前(2016年)に制作したのですが、この部屋自体が作品なのではありません。この部屋を使って、映画と写真の作品を作ったのです。ですからこれは、一般的に言う、映画や写真撮影のためのセットです。このセットの中に、私はゴッホに扮して入り込み、演技したり、ポーズをとったりして、いくつかの作品を作りました。(そのとき作った写真作品、「自画像の美術史(ゴッホの部屋を訪れる)」も展示しているので、あわせて御覧ください。
実際に「ゴッホの部屋」を作ると、いろいろなことがわかります。たとえば、絵と同じようなサイズ感にしようと思うと、ベッドをやたら大きく作らないといけない。あるいは、ゴッホ風の床を表現するには、床板の筋目をヒモで表現するとピッタリだ、とか。
これらは、私がひとりで発見したことではなく、チーム・モリムラのみんなが、ああだこうだと試行錯誤しながら発見したことなんですが、このように苦労して部屋を作っていくうちに、知らぬ間にみんなで、ゴッホの絵の中に入ってしまっているんですね。
ゴッホ自身が描いた部屋の壁には、絵が数点掛かっています。それで、私の「ゴッホの部屋」にも3点の絵を掛けました。それらはいずれも、かつて私が作った、ゴッホの絵をテーマにしたセルフポートレイトの写真作品に置きかえています。
ゴッホの描いた部屋の絵と、チーム・モリムラが制作したセット、「ゴッホの部屋」を見較べているうちに、あなたもゴッホの絵に入ってしまったかのような気分になるかもしれません。
誰でも絵の中に入っていける。そして絵の中に入れたら、絵の世界がぐっと身近に感じられ、他人事ではなくなってくる。私は、ずっとそう信じています。
ただし金曜日、土曜日は午後8時まで開館
*ただし1月19日(金)は午後5時閉館
*入館は閉館の30分前まで
(ただし、2月12日(月・休)は開館し、2月13日(火)は閉館)