東川賞受賞作家展キュレーター 楠本亜紀氏によるブログが更新されました。
本年度の東川賞海外作家賞対象国であるカナダ・バンクーバーの現代写真について書かれています。
https://curatory.exblog.jp/27386415/バンクーバーの現代写真
フォトコンセプチュアリズム、ポストコンセプチュアルフォトとその後
たくさんのボートが停泊するフォールス・クリークから見たバンクーバー中心街
今年の東川賞海外作家賞対象国はカナダだ。カナダは1994年の第10回目で対象国になっているが、このところ北米が対象となっていなかったこともあり、(といっても、北米の対象となるのはカナダとアメリカ合衆国だけで、アメリカはすでに4回対象国となっている。)再度対象国となった。前回の授賞者はモントリオールで活躍するミッシェル・カンポウ。今年の受賞者であるマリアン・ぺナー・バンクロフトはバンクーバー出身だ。
カナダは多文化社会で、トロント、オタワ、モントリオール、ケベック、ハリファックス、ウィニペグ、バンクーバー等を中心としながら、それぞれの地方で独自の文化圏を作っている。たとえばフランス語圏であるモントリオールでは主観的で抒情的な傾向の写真が強く、バンクーバーでは理知的な傾向があるといわれている。特にバンクーバーはフォトコンセプチュアリズムのメッカとして、国際的にも評価が高く、ジェフ・ウォールらを中心とする、フォトコンセプチュアリズムあるいは、ポストコンセプチュアルフォトの「バンクーバー・スクール」という言葉をいろいろなところで耳にする。
だが、フォトコンセプチュアリズムは1960年代後半から1970年代はじめ頃まで盛んだった、コンセプチュアル・アートの文脈で写真を用いた作品で注目された活動に対する呼称とされているし、バンクーバー・スクールは主に1970年代後半か80年代以降にバンクーバーで活躍した、ジェフ・ウォールやイアン・ウォレスとその流れをくむ写真家たちを指すものとされている。
どうして時期がずれる内容の二つがバンクーバー・スクールを形容するものとして使われるのか? バンクーバー・スクールはどういったグループなのか? 昨年11月にバンクーバーにリサーチに訪れた際には、こうした問いがずっと頭を巡っていた。短期間のリサーチで確たることは言える立場にはないのだが、そこで得た知見や資料にあたりながら、フォトコンセプチュアリズム、ポストコンセプチュアルフォト、バンクーバー・スクールはどのように重なりあい、現代のバンクーバーのアート写真の現場はどのような状況にあるかについてのイントロダクションを試みる。
UBC人類博物館
先住民から簒奪したと思われる由来も定かでない収蔵品について、ポストコロニアリズムの視点から、
近代が生み出した博物館システムについて自己批判するキャプションがつけられていたのが印象的だった。
~後略~
全文は下記リンクより
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