中藤毅彦氏 展覧会「"Barnack"das Original」

バルナックライカは、35mmフィルムを使用して24×36mmの画面を36枚写せるという規格を生み出し、現在に至る全ての35mmカメラに決定的な影響を与えました。バルナックライカこそが「現代的カメラ」の始祖であると言えるでしょう。
そして90年もの時間が経過したデジタル時代の現在も、いわゆる「フルサイズ」としてカメラの揺るぎない基準となっています。
バルナックライカは、その小型軽量さと速写性に富んだ操作性の良さで、スナップショットという撮影法を可能にし、ブレッソンやウィリアム•クライン、ロバート•フランク、エルスケン、木村伊兵衛、桑原甲子雄といったスナップショットを撮るカメラマン達にも愛用されました。
写真という表現は常にテクノロジーの進化と呼応しながら発展して来た表現ジャンルです。
もし、バルナックライカがこの世に生まれていなかったら写真の歴史は随分とつまらないものになっていたのは間違いありません。
そうした意味で、スナップを志す全ての写真家はライカを使用しているか否かにか関わらずオスカー•バルナック博士に敬意と感謝を表してもおかしくないほどです。
現在、バルナックライカはデジタルカメラに押されて忘れられつつあります。
ライカと言えばM型やデジタルで、バルナックライカなどは過去の遺物と思う人も多くなりつつあります。
しかし、90年近く前のカメラが未だに実用に堪えるという現実の前に、過去の遺物などという言葉はふさわしくありません。それは、オスカー•バルナックによる設計の冴えだけでなく、材料や工作に一切の手抜きをしなかった造りの良さの証明でもあるのです。
我々は、将来、人類の文化遺産となるべきバルナックライカの研究や収集と、何より実際に作品を撮って発表する事を通じて、原点にして究極のスナップカメラ、バルナックライカの偉大さに再び光を当てる活動をしたいと考えています。