展覧会「覚醒する写真たち」今道子+佐藤時啓

FUJIFILM SQUARE( フジフイルム スクエア)写真歴史博物館では、2019年9月1日(日)から12月27日(金)まで、異色の写真家と呼ばれた二人のアーティスト、今 道子と佐藤時啓の作品展を開催いたします。
フランスで発明された写真術が日本に渡来したのは1848年のこと。以来、日本では独自の写真文化が形成されてきました。日本の写真表現が熟成するのは1960年から70年代。そして、80年代には写真専門の美術館やギャラリーが設立され、80年代後半になると、現代美術でも写真を使った作品が注目を集めるようになります。この頃に異色の写真家として登場したのが、今 道子と佐藤時啓です。二人は現在も国内外で広く活躍し、美術と写真の両方面から高く評価されています。
今 道子(1955— )は、創形美術学校で版画を学んだのち写真に転じ、1985年から本格的な作家活動に入りました。野菜や魚、果物といった食物、帽子やハイヒールなどの素材を緻密に組み合わせたオブジェを制作し、自ら撮影して印画紙に焼き付ける独自のスタイルは他に類を見ません。作家のイマジネーションを具現化した特異なオブジェは見る者を刺激し、代表作〈EAT〉に象徴される奇妙で魅惑的な作品は、現在さらなる進化を遂げています。
佐藤時啓(1957— )は、東京芸術大学美術学部および同大学大学院で彫刻を学んだのち、1980年代後半に彫刻の制作から写真に転じました。作家自身がペンライトや鏡を持ってカメラの前で動き回り、長時間露光でその光の痕跡や空間をとらえた代表作〈光-呼吸〉のシリーズをはじめ、その創作活動は一貫して写真の原理を追究しています。佐藤の好奇心と実験精神に満ちた作品は、現在も新たな技術を取り入れながら進化し続け、とどまるところを知りません。
二人に共通しているのは、写真以外の美術から写真表現に行き着いたこと、三次元のオブジェや身体的運動を印画紙という二次元に完結させていること、写真芸術として認められるプリント作品を最終形態としていることです。両者の表現は、ともに限りなくアートに近い写真作品でありながら、反比例するように写真の原理や本質に近づいていきます。独自の方法で写真の真髄を精製していく創作行為は、まさに「写真の錬金術」というべきものです。
本展は、第1部では今 道子、第2部では佐藤時啓を特集し、それぞれ初期から現在までの作品を集約して展示します。唯一無二の方法で写真を追究し続ける“写真の錬金術師” 、今 道子と佐藤時啓。デジタル写真が圧倒的な位置を占め、写真表現がますます複雑化、多様化している今日、二人の写真作品から「写真とは何か」を再考する試みです。
Part 1
今道子「蘇生するものたち」 2019年9月1日(日) - 10月29日(火)
【ギャラリートーク】各回ともに約30分の予定です。
Part 2
佐藤時啓「呼吸する光たち」 2019年10月30日(水) - 12月27日(金)
2019年12月14日(土) 14:00~ / 16:00~
各回ともに約30分の予定です。
会場:フジフイルム スクエア 写真歴史博物館