飯沼珠実さん 写真展「JAPAN IN DER DDR ー東ドイツにみつけた三軒の日本の家」

「JAPAN IN DER DDR 東ドイツにみつけた三軒の日本の家」は、東独より日系企業が受注した三軒のホテルとわたしのカメラの対話の記録だ。
2008年、ライプツィヒに引っ越して間もないとき、中央駅裏手にたつウエスティン・ライプツィヒ(旧インターホテル・メルクア)が、日本人によって建設されたと聞いた。わたしはこのホテルを身近に感じ、このホテルを眺めることで親しい友人と会うような感覚を憶えるようになった。
2014年、ベルリンの壁崩壊から25年が過ぎたとき、それまで外から眺めたことしかなかったこのホテルに宿泊した。ホテルのなかを散策しながら写真を撮っていると、開業時から働いているという清掃係の男性と出会い、短い会話をした。それからわたしはこのホテルのことをもっと知りたくなって、ドイツの図書館や建設会社の社史室に通い、また東独に駐在したひとたちとの面会の機会にも恵まれた。そしてホテル建設の軌跡を追いかけるように、ライプツィヒからドレスデン、そしてベルリンへと移動し、写真を撮った。
2019年、わたしは建築について考えている。今年はベルリンの壁崩壊から30年、初夏のミュンヘンで古屋誠一さんと再会した。4年前にドレスデンで古屋さんと会ったとき、古屋さんがいっていた「日常の映像化」ということを、いまのわたしが<家>をつくることと結びつけて考えるようになったのは、「JAPAN IN DER DDR」ということを考えはじめて数年が経ったいま、自分がなにか建築的な空間に受け容れられているように感じ始めていたためだ。
写真を通した歴史への問いかけ、社会への働きかけの痕跡に立ちあらわれる<家>から、わたしたちはまた出発することができるのだろう。
(飯沼珠実)
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2020年1月23日(木) 〜 2020年2月 5日(水) 日曜休館
10:30~18:30(最終日は15:00まで)
大阪ニコンサロン 〒530-0001 大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階