オノデラユキ氏 展覧会「TO Where」
写真家としてのオノデラの制作と思考は、一貫して、世界の模倣、写し、記録装置としての写真のありかたに揺さぶりをかけるような、〈写真の存在論〉〈カメラの存在論〉とも形容できる、独自の探究に捧げられてきました。オノデラの制作を振り返れば、カメラの機構、プリント、撮影行為のすべてにおいて、なんらかの造形行為、演出が重視されていることがわかります。この点においてオノデラは、記録装置としての写真から距離を取り、写真とカメラを、造形的なものとして捉え直していると言えるでしょう。印象派の時代、現実の克明な記録を可能にするカメラ装置の出現が、絵画の新たな造形的展開を推し進めた歴史を逆なでするように、オノデラは、カメラと写真というテクノロジーに潜在する造形的な可能性こそを拡張しようとするのです。
新作個展となる本展は、コラージュ、ペインティング、フォトグラム、ドリッピングといった行為によって、何らかの操作がなされた写真で構成されます。銀塩写真プリントも、すべてオノデラ自身によるものです。これらのシリーズは、『Darkside of the Moon』と名付けられました。たしかに存在することは知っていても、その場所からは見えない「月の裏側」。写真というメディアの探究において、認識と知覚のあわいを往還するオノデラの新作をぜひご高覧ください。
会場:Yumiko Chiba Associates viewing room shinjuku
〒160-0023 東京都新宿区西新宿4-32-6 パークグレース新宿#206
営業時間:12:00-18:00 定休日:日、月、祝日