野町和嘉氏 作品展 「サハラ」
野町和嘉さんは、1971年にフリーランスとなって以降、アフリカ、中近東、アジアなど世界各地で取材を続けているドキュメンタリー写真の第一人者です。
本展では、1974年から75年にかけてサハラ最奥地で撮影された作品を中心に構成した65点(全てモノクロ)を展示します。
1972年、サハラと出会った25歳の野町さんは、その広大な自然と過酷な環境の下で淡々と生きる遊牧民たちの強靱さに圧倒され、のめり込むように撮影を続けました。現在とは異なり、秘境、辺境への旅に対する情報が皆無に等しい中で、ヨーロッパから4WD車を持ち込んでサハラ最奥地を好奇心と体力に任せて自在に巡ったのです。風紋が美しいリズムを描き出す砂漠、隊列を組んでいくラクダ、儀式を終えたトゥアレグ族の戦士たち、熱風が吹き抜けるテントで過ごす少女、白い布にくるまれた生後4カ月の赤ちゃんなど、作品には厳しい大地とたくましく生きる遊牧民たちの命の輝きが表れています。
現在は世界遺産となっているタッシリ・ナジェール(アルジェリア南東部、サハラ砂漠にある山脈)に描かれた先史時代の岩壁画は、かつて水が豊富だった時代に生きたキリンや牛などの動物、そして、人々の生活を語りかけてきます。熱気が張りつめる昼と漆黒の静寂に包まれる夜を重ねて撮られた作品は、地球に息づく自然と多様な文化への賛歌と言えましょう。