渡部雄吉氏 作品展「張り込み日記」
JCIIフォトサロンでは、来る2021年3月30日(火)から4月25日(日)まで、渡部雄吉作品展「張り込み日記」を開催します。
渡部雄吉(1924~1993年)は、1950年代から『文藝春秋』『中央公論』などのグラビアページで活躍し、1960年以降はエジプトやアフリカ、アラスカ、ヨーロッパなどへの海外取材を重ね、戦後フォトジャーナリズムを支えた写真家として知られています。多数の名作がある中で、今回は、実際の事件捜査に密着したドキュメンタリー作品「張り込み日記」(53点、全てモノクロ)をご覧いただきます。
1958年1月に茨城県水戸市でバラバラ殺人事件が発生し、警視庁捜査1課のベテラン刑事と茨城県警から派遣された若手の刑事が合同捜査を担当しました。同年4月に二人の刑事を20日間にわたって密着取材した渡部は、盛り場や商店での聞き込み、上野駅での張り込み、捜査本部での会議、容疑者を追い詰める取り調べの様子などを撮影しました。渡部の熱意により、事件と向き合う刑事の気迫と東京の街並み、そして、高度経済成長に足を踏み入れた昭和という時代が活写された優れたドキュメンタリー作品となっています。
本作品は、撮影された1958年に刊行の総合雑誌『日本』(大日本雄弁会講談社)6月号に一部が掲載され、JCIIフォトサロンでは渡部氏没後の1994年に開催の回顧展で約20点を展示しています。その後、2011年にフランスで写真集にまとめられると世界中で評判になり、日本でも2種類の写真集が発売されました。渡部氏のネガを収蔵しているJCIIではこの度再調査を行い、今回は『日本』掲載の全作品を含む新しい構成でご覧頂きます。
渡部 雄吉(わたべ ゆうきち)
1924年、山形県酒田市に生まれる。1943年、東京光画社に入社し写真部員としてカメラマン生活に入る。1945年、陸軍に入隊し撮影班に配属されるも間もなく終戦。戦後は、田村茂氏の助手を経て1950年にフリーランスとなり、『中央公論』『文藝春秋』等の総合雑誌を中心に活躍。1960年よりエジプト、アフリカを半年間取材し、1963年には平凡社のグラフ誌『太陽』創刊号の特派カメラマンとしてアラスカのエスキモー村を取材。このほか、欧州各地を巡った成果で多数の写真集を制作。1972年より1992年まで、日本全国の神楽を撮影。1984年から1986年に日本写真家協会副会長を務める。1992年、紫綬褒章受章。1993年8月8日逝去、享年69歳。
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2021年3月30日(火)〜2021年4月25日(日)
10:00~17:00
休館:毎週月曜日(祝・祭日の場合は開館)
JCII 102-0082 東京都千代田区一番町25番地 JCIIビル