宇井眞紀子氏 写真展「息の緒」
両親と母方の祖母が暮らした家を解体することになった。祖母は90歳近くまで約10年ほどこの家で暮らし時々ひ孫(私の娘)の面倒を見てくれた。娘を預かる役の中心を担ってくれたのは、母だ。2009年に急死するまでこの家で暮らした。父は母が亡くなる数年前から認知症を患い施設で暮らし、2018年に私や娘や親戚が見舞った直後に息をひきとった。誰も住まなくなった家に引っ越した私は、8年ほどこの家で暮らしたが、私にとってはほとんど思い出のない家だ。でも、両親が選んで暮らした家の最後を見届けたいと思った。取り壊されていく部屋を撮影していると、父や母や祖母の姿が浮かんできた。両親は目の前に広がる栗畑に惹かれてこの家を選んだという。今、私は解体跡に建てた新しい家の窓から、毎日その栗畑を見ている。コロナ禍の閉塞感の中、命を育み季節の移ろいを伝えてくれるその姿に救われている。祖父母がいて両親がいてはじめて私がいるという命のつながり・・・そのつながりは奇跡のよう。解体の様子の間間に両親の遺品を撮影した写真を置いた。家には暮らしの息遣いが宿っている。
出展作品数:約50点
10:00 〜 18:00 入場無料 ※最終日15時まで 6月22日(火)・23日(水)休館
〒160-0023 東京都新宿区西新宿1丁目24番地1号 エステック情報ビルB1F