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深瀬昌久氏 写真集「サスケ」


東川賞受賞作家 出版のお知らせ

赤々舎 より、深瀬昌久氏 の写真集が出版されます。


サスケ

深瀬昌久氏 写真集「サスケ」_b0187229_09020276.png

以下リンクより

深瀬昌久の新たなる傑作


生涯にわたり、猫を身近に愛しつづけた深瀬昌久。本書は、深瀬の猫写真の主人公サスケと、その妹分モモエの写真を集成した決定版である。
写真のセレクトから編集に至るまで新たに作り上げられた本書は、猫写真というジャンルを超え、深瀬の作品展開の中核を為すものとして「サスケ」を位置づけた。
また、「サスケ」を通して探求した写真表現の数々──主客未分から得られる純粋経験や、視覚と触覚を掛け合わせた知覚──を解き明かす。
深瀬昌久の作品世界への重要な視座となる写真集。

巻末に、トモ コスガによるテキスト「愛という名の純粋経験」を所収。



「私は猫眼の高さで腹這いになってこの1年余り実によく写真を撮っていたので、なんだか猫になってしまった。自然の移ろうなかで気ままに好きなものと遊びながら写真を撮るのは、幸せな作業だった。私はみめうるわしい可愛い猫でなく、猫の瞳に私を映しながら、その愛しさを撮りたかった。だからこの写真集は、サスケとモモエに姿を借りた私の『自写像』といえるのかもしれない」
深瀬昌久『猫の麦わら帽子』(文化出版局、1979年)より





「サスケ」刊行にあたって

トモ コスガ



代表作「鴉」で写真史に爪痕を残しながらも長らく日の目を見ることのなかった数奇な写真家、深瀬昌久。彼がこの世に残した傑作「サスケ」が満を持して刊行となります。

物心つく頃から猫と隣り合わせの人生を送った深瀬の写真には、実に数多の猫が登場しました。中でも彼によって最も多く撮られ、今でも彼の猫写真を象徴する1匹として世界中から愛され続けているのが、キジトラ模様のサスケです。

深瀬は70年代後半に「ビバ!サスケ」「サスケ!!愛しき猫よ」「猫の麦わら帽子」と猫を題材にした写真集を3冊も世に送り出しました。その全てがサスケと、次いで飼い始めた三毛猫モモエの2匹を被写体にしたものでしたが、あくまでも当時の日本に到来した空前の猫ブーム需要に応える目的に沿った出版であり、彼の写真表現を前面に押し出した作品集とは言いがたいものでした。そうした背景も相まってか、これまで「サスケ」が人々に癒しを与えるような猫写真のジャンル内で評価されることはあっても、作品として批評される機会に恵まれることはそれほどなかったのです。しかし「サスケ」が、実は深瀬の代表作「鴉」と表裏一体にあり、ひいてはその2作が、彼のもうひとつの代表作「洋子」を陰陽にそれぞれ分けたものだと知った時、その真価は初めて問われると言えるでしょう。

深瀬の妻・洋子との離別がきっかけとなって制作が開始されたのが「鴉」でしたが、12年間に及ぶ彼女との結婚生活について、彼が「しまいには写真を撮るために一緒にいるようなパラドックスが生じ、それは決して幸せなことではなかった」と振り返ったように、70年代中盤には夫婦としての関係に終止符が打たれました。まるで霞がかった井戸の底を覗き込むような、虚無のブラック&ホワイト。それはのちに深瀬の代表作となるだけでなく、現在では日本写真の金字塔として世界的に評価されています。

その前身にあたる「洋子」は、題名が示すように自身の妻を題材とした作品ですが、彼女を写した写真群の合間にカラスを写した写真を印象的に織り交ぜて構成されました。それに続く形で発表された「鴉」においては彼女の姿こそ見当たりませんが、闇を舞うカラスにその残像を見るのはそう難しいことではありません。つまり私たちは「鴉」を通じて、妻の喪失を起因とした深瀬の寂寥を感じ取ることができます。

さて当時、深瀬が「鴉」と並行して向き合う題材がありました。それが「サスケ」です。深瀬は、洋子と別れた直後にもらってきたその仔猫をどこへ行くにも伴っては、のびのびとした姿や奔放に戯れる様子を夢中で撮り続けました。その前年に洋子との離別があったことを踏まえると、やはりサスケの影に彼女の残像を見ずにはいられません。しかしその姿は「鴉」とは対照的に、生ける喜びが全面に溢れ出たもの。言ってみれば、古い歌謡集「梁塵秘抄」に収められた文句「遊びをせんとや生れけむ 戯れせんとや生れけん 遊ぶ子供の声きけば 我が身さえこそゆるがるれ」を連想させるほど、生に突き抜けた表現であることが見て取れます。そのことから「サスケ」を通じて見ることができる戯れとその享楽とは、かつての賑やかな結婚生活の追憶であるとも受け止めることができます。

このように、「鴉」を通じて自らの業を背負いながらも「サスケ」を通じてそれを前向きに受け止めたという意味で、両者は陰陽の表裏一体にあったと捉えることができるのです。

そのような作家背景を抜きにしても、「サスケ」は写真表現を通じた深瀬の試みを教えてくれます。彼が書き残した言葉の数々を辿りながら2匹の写真をつぶさに視ることで浮かび上がるのは、言葉が通じない動物を相手にするからこそ働かせる身体的な触覚の発動、あるいは被写体に自らを重ねる感覚としての主客未分の境地であり、それらこそ深瀬が一生涯をかけて撮った写真を貫く特有の感覚だったとも言えるでしょう。ですからやはり、「サスケ」なくして深瀬の写真を語り尽くすことはできないと言っても過言ではございません。

今回、「サスケ」を再びこの世に送り出すに当たって、彼の視座は従来の3冊を単に復刻することでは確かめることが難しいと判断し、写真の選出から編集に至るまで、いちから作り上げました。その際には、深瀬が70年代当時に自ら焼いたビンテージ銀塩プリントからの選出と図版作成をし、サスケにまつわる彼の手記を頼りにしながら、深瀬がサスケを通じて試みたに違いない表現の数々が見て取れる写真を余すことなく詰め込みました。

本書をもって、「サスケ」が「鴉」や「洋子」と併せて後世に引き継がれ、また写真史に刻まれることを心から願います。



トモ コスガ
深瀬昌久アーカイブス 創設者兼ディレクター/ 本書編集者


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¥ 5,000+tax
発行:赤々舎

Size: H260mm × W185mm
Page:192 pages
Binding:Hardcover

Published in June 2021
ISBN978-4-86541-136-2





by higashikawa_blog | 2021-06-27 09:03 | 受賞作家関連
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