辻田美穂子さん 個展「カーチャへの旅」

幼い頃から聞かされた祖母のおもいで話はところどころロシア語で、日常の回想にはロシア人が登場した。寒い地域ならではの暮らしや風習は、自分の育った環境からは想像もつかないような不思議な世界で、まるでおとぎ話を聞いているようだった。そんなぼんやりとした景色を、年を重ね、自分の目で見てみたいと思うようになった。
2010年、私は62年ぶりに帰郷する祖母と、サハリンへ渡った。荒涼とした土地や、日本時代の遺構をところどころに残すのみとなった景色はうら寂しく、話に聞いていたかつての面影はあまり見られなかったが、それでも祖母はその景色を愛おしそうに、長いあいだ見つめていた。祖母には恵須取の街が確かに見え、私には全く見えなかった。けれどもその視線の先をどうしても見たくて、私の旅がはじまった。
1988年大阪生まれ。ビジュアルアーツ大阪写真学科卒業後、広告代理店にてカメラマンアシスタントとして勤務。
2010年に初めて樺太に行き、2013年より北海道を拠点とし撮影を続けている。
[主な個展]
『フレップの種子』(Gallery Niepce、東京、2011)
『カーチャへの旅』(Kanzan Gallery、東京、2016)
[主なグループ展]
『カーチャへの旅』(AMS写真館、京都、2014)
[アーティスト・イン・レジデンス]
「第35回東川町国際写真フェスティバル」(東川町赤レンガ倉庫、北海道、2019)
休館:月曜日