展覧会「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」
93年のデビュー以来、長島は、自身を含む同世代の女性写真家をくくった「女の子写真」というカテゴリーに疑問を持ちながら、作品制作と執筆活動を続けてきました。80年代のメディアが喧伝した揶揄的なフェミニスト像に違和感を持っていた若い長島は、「フェミニスト」と自称することを避けつつも、常に男性中心主義的な価値観への問題提起を作品にしてきました。当時の若者のフェミニズム的実践を見えにくくしたそのような態度は、日本における第三波フェミニズムの一つのあり方であったと考える長島は、「運動」や「連帯」の形を取ってこなかった作家たちの作品にもその要素が見いだせるのではないかといいます。このような考察に基づき、長島が9名の作家との対話を経て選んだ作品をご紹介いたします。
目の前の状況に対応するために生み出される様々な実践を、バリエーションに富む作品の中に見いだす機会となれば幸いです。
関連プログラム
- 【インスタLIVE】開幕前夜!夜の展示室からアーティストがお届け
- 日時:2021年10月15日(金)19:00〜20:00
会場:「ぎこちない会話への対応策」展示室内からライブ配信
料金:無料 - アーティスト・トーク 長島有里枝 × 木村友紀
- 期間:2021年10月16日(土) 16:30〜18:00(開場16:00)
会場:金沢21世紀美術館 レクチャーホール
定員:一般30名(要事前申し込み)
料金:無料 ゲストキュレーター ステイトメント
わたしはフェミニストじゃないと思っている人へ
若い頃、自分はフェミニストじゃないと思っていた。テレビを通じて知るフェミニストは皆、学者(聡明な人)で、運動家(強い人)で、自分よりずっと年上の女性たちだったから。進学校の落ちこぼれ、連帯や運動のような人間関係を上手く構築する自信もなければ、そもそも自分は女だということがしっくりこず、ただ生きづらさだけ引きずって日々を消費していたわたしが、フェミニストになれるわけがないと思ったし、積極的になりたいとも思えなかった。
それなのに、いざ作品をつくり始めると、それらは決まって社会学的な課題―なかでも特に、フェミニズムが扱うような問題―に言及するものばかりだった。それでもわたしは「わたしはフェミニストだ」と宣言しなかったし、自分の作品をフェミニズム・アートだとは呼ばずにいた。1990年代、わたしと似たような生きづらさを抱え、自己表現を生きる拠りどころとしていた芸術家(美術や音楽や文学など、そのジャンルは多岐に渡った)が沢山いた。彼女たちのなかには、フェミニストだと自負している人も、そうは思っていない人も、自分は違うと明言する人もいた。要するに、フェミニズムの実践が必ずしも「フェミニスト」だけに担われていたわけではないことを、第三波フェミニズムは示したと言える。
半端なフェミニストのわたしが、「こっち側の人」と勝手にみなした9名の作家に声をかけ、彼らのアート実践にフェミニズムの見地から新たな解釈を与えるべく、集まってもらった。フェミニズムの展覧会はどうやって生まれるのか、フェミニストとはどんな人たちか、連帯や仲間とはどういう関係性のことなのか。これといった正解はないだろう問いを巡り、いつものおしゃべりやSNSでのやりとり、真夜中の電話やちょっとした議論を通じてぎこちなく語りあった、わたしたちの暫定的な対応策である本展を、皆さんにも楽しんでいただけたら嬉しいです。
長島有里枝出展作家
岩根愛 IWANE Ai
木村友紀 KIMURA Yuki
小林耕平 KOBAYASHI Kohei
さとうりさ SATO Risa
ミヨ・スティーブンス-ガンダーラ Miyo STEVENS-GANDARA
長島有里枝 NAGASHIMA Yurie
潘逸舟 HAN Ishu
藤岡亜弥 FUJIOKA Aya
ミヤギフトシ MIYAGI Futoshi
渡辺豪 WATANABE Go******************************
2021年10月16日(土) 〜2022年3月13日(日)
10:00~18:00(金・土曜日は20:00まで)休館:月曜日(ただし11月1日、11月22日、2022年1月3日、1月10日は開場)、 11月24日(水)、12月29日(水)〜2022年1月1日(土・祝)、1月4日(火)、1月11日(火)
観覧料:一般:1,200円(1,000円)
大学生:800円(600円)
小中高生:400円(300円)
65歳以上の方:1,000円
※当日観覧券販売は閉場の30分前まで
※( )内は団体料金(20名以上)及びウェブチケット料金金沢21世紀美術館 〒920-8509石川県金沢市広坂1-2-1