片山真理氏 展覧会「 leave-taking」
この度、Akio Nagasawa Gallery Ginza は、片山真理新作個展「leave-taking」を開催致します。
片山真理は1987年群馬県出身。2012年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。自らの身体を模した手縫いのオブジェ、ペインティング、コラージュのほか、それらの作品を用いて細部まで演出を施したセルフポートレイトなど、多彩な作品を制作しています。
近年の主な展示に、2021年「Home Again」(ヨーロッパ写真美術館、パリ、フランス)、「リバーシブルな未来 日本・オーストラリアの現代写真」(東京都写真美術館、東京、日本)、2019年「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ」(ヴェネチア、イタリア)、「Broken Heart」(White Rainbow、ロンドン、イギリス)など多数。2019年第35回写真の町東川賞新人作家賞、2020年第45回木村伊兵衛写真賞など数々の受賞歴があります。
本展では、全て新作となる「leave-taking」シリーズより作品を展覧致します。また、本展開催にあわせ、作品集『Mother River Homing』をAkio Nagasawa Publishingより刊行致します。
是非ご高覧ください。
《作家ステートメント》
「正しい身体」から消失の過程まで。
三部作と呼んでいる『shadow puppet』、『bystander』、『on the way home』の撮影から約5年経った。
その間、出産や育児、制作の拠点を定め、生まれて初めてアトリエを持つなど生活や環境が大きく様変わりした。
その変化は制作に影響しているように思える。
子がハイハイしだしたら危ないからと針と糸を片付け、『cannot turn the clock back - gift』を最後にオブジェ制作からは遠ざかっていた。
その代わり故郷近くの足尾銅山や渡良瀬川周辺、出張先のホテルでも撮影するようになり、
信頼できる技術者との出会いもフィルム撮影に拍車をかけた。
同時に、海外での初個展や国際展の参加、写真集出版など、外に向かうことや、過去作と向き合う機会が多くなり、
「身体あっての制作」という自覚と希望をもちつつ、外に出れば出るほどその「身体」に求められる「正しさ」の逆風を強く感じるようになった。
自己を写す鏡としての「あなた」や「社会」に、同じく鏡を内包するカメラを向けることで生まれる「合わせ鏡」。
その永遠性に真理が在るような気がする。
世の中は「正しい身体」にフィットするようできている。わたしにとってのオブジェは、そんな「正しい身体」の代用品だった。
オブジェの「作品」という存在価値は「正しい身体」のそれと等しい。
だから私はいつまでも写真の中で「作品」ではなくマネキンでいられたのだ。
『leave-taking #010』において、長時間露光の中ゆっくりと部屋を満たしていくような光は、そんなオブジェに対する飽和した愛と憎しみのようにみえる。
しかしこの5年の生活でオブジェはあまり頼りにならなかった。(オブジェは制作してくれないし、光熱費も払ってくれないからね!)
どんな出来事も、身体あっての遭遇だろう。
生きるにも死ぬにも、正しさや間違えは関係なく、この身一つが全てだったのだ。
光と光のぶつかり合いで、その間に立つものが消えてしまうグレア現象(蒸発現象ともいう)というものがあるが、それも合わせ鏡に似ている。
まぶしい「正しい身体」を手放して身軽になれば、光も真っ直ぐ届くだろうか。
片山真理
開廊時間|火〜土 11:00–19:00 (土 13:00–14:00 CLOSED)
休廊日|日・月・祝日
※12月28日(火)〜1月8日(土)は冬期休廊となります。