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池田葉子氏 オンライン展覧会のお知らせ


東川賞受賞作家 オンライン展覧会のお知らせ

川崎市民ミュージアムのサイトにて、池田葉子氏のオンライン展覧会をご覧いただけます。

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©池田葉子


以下リンクより

このたび川崎市市民ミュージアムは「Trail 池田葉子 / 小山貢弘」展を開催いたします。
当館は令和元年東日本台風による被災後は休館が続いており、館内の展示室を使用した展覧会事業を行うことが難しい状況にあります。そうしたなかで、当館の活動を発信する試みとして、今年度はウェブサイト上のオンライン展覧会を企画いたしました。
その始まりとなる本展は、二名の写真家が本企画のために撮り下ろした作品をご覧いただこうとするものです。池田葉子(1965-)は休館中の市民ミュージアム内部空間を、小山貢弘(1980-)はミュージアムが所在する中原区等々力の多摩川河川敷をモチーフにしました。
池田と小山は、ふとした瞬間に思いがけず出会った名もなき空間や、人知れず繁殖と淘汰を繰り返す河川敷の植生に関心を寄せ、意識と無意識のはざまにある覚束ない世界や、人知の及ばない形態の変容を写真というメディアを通して表現します。
私達の日常の傍らに存在しながらも、見過ごされ記憶から零れ落ちてゆく、もの言わぬ存在へ向けられた作家の眼差しをお楽しみいただけましたら幸いです。

ふとした瞬間に思いがけず出会った名もなき空間、人知れず淘汰と繁殖を繰り返す河川敷の植生―池田葉子と小山貢弘は、意識と無意識のはざまにある覚束ない世界や、人知の及ばない形態の変容に関心を寄せて写真作品を制作しています。
このたび、作家が本展のために写真を撮り下ろしました。人々の痕跡が幾重にも重なる建築や、空に向けて枝葉を広げる草木といった、もの言わぬ存在へ向けられた作家の眼差しをご紹介します。


展覧会紹介
Trail−それは覚束ないながら、目を凝らしてみたいもの

 当館のコレクションは台風による収蔵庫浸水により、深刻な被害を受けた。立場こそあれ、事態に直面した誰しもが、確かなことは分からない状況に置かれ、それぞれに与えられた役割を果たしながら、道なき道を進む、そのような歳月だった。
 文化芸術の守り手であるミュージアムの被災は、館に関わってきた多くの人々に衝撃を与えた。なかでも館に作品が収蔵されている作家や、美術館という存在を拠り処にする作家が受けた衝撃は計り知れないものだっただろう。
被災後、館にゆかりのあった一部の作家たちの中には、この出来事を自身の作品表現と紐付けて理解しようという反応が見られた。館に足を運び、被災した自身の作品や、ミュージアムとしての機能を失った建築を写真におさめ、自問自答した作家たちが存在する。

 本展はそのような作家たちの動向を追う試みから始まった企画である。池田葉子は、収蔵作家の付き添いで、作品の状態確認のために館を訪れた。被災の現状を知り、作品の救済に心を寄せるなかで、館の依頼によりミュージアム内の撮影を行うこととなる。
 池田の作品からは、作家がミュージアムで出合った空間や物体に対する戸惑いや不安、楽しさや驚きといった感情がこぼれ伝わってくる。それはまるで、いつかの冬の日に、白く曇る窓に描いた落書きのように、姿を留めることの叶わない形態に対する、人間のとりとめのない感情を代弁するかのようだ。
 作品を眺める私たちの心に刻々と浮かんでは消える名も無き感情の機微、あるいは朧げな古い記憶の残像を呼び起こす形態と質感とを、池田は丁寧に作品に落とし込んでゆく。

 かたや、小山貢弘は被災前の収蔵庫の姿を知る数少ない作家の一人であり、収蔵庫の惨状に言葉を失いつつも、館を離れ、作家が長年取り組む多摩川河川敷のシリーズより本展の出品作品を選んだ。
 梅雨が明けて夏に向かう頃、ミュージアムにほど近い等々力河川敷の植生はその勢いを増し、四方八方に枝葉を伸ばして互いに絡み合い繁茂する。一刻としてその活動が収束することは無く、その様相は日々変化してゆく。小山は大型のフィルムカメラを担ぎ、その様子を丹念に観察し構図を決める。
 そうして写し出された風景は、植物の生命感というよりも、むしろ寂寞たる印象を見る者に与えるかもしれない。まるで小山の眼差しによって丹念に剪定され、時間を止められた庭のようでもある。その庭を目のあたりにしたとき、取り戻すことのできない時間と消えた存在への想いの在り様を、滔々と問いかけられているような錯覚を覚える。

 池田と小山の写真作品を見たとき、私たちはどのような感情を抱くだろうか。それは作品制作の背景にある、災害と作品の喪失という社会的事象を越えてゆくものであるのだろう。被災という出来事に触れたことで、自然発生的に生じ、ゆるやかに派生してゆく作品表現を辿り、それらが同時代の精神性をどのように表象しうるのか。それを考察する試みは、始まったばかりである。



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2021.12.23 - 2022.03.31





by higashikawa_blog | 2022-01-14 12:40 | 受賞作家関連
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