展覧会「写真と絵画−セザンヌより 柴田敏雄と鈴木理策」
「ジャム・セッション」は、アーティゾン美術館のコンセプト「創造の体感」を体現する展覧会。作家と同館の学芸員が共同し、石橋財団コレクションの特定の作品からインスパイアされた新作や、コレクションとアーティストの作品のセッションによって生み出される新たな視点による展覧会をつくることを目指している。
3回目となる今回は、写真家の柴田敏雄と鈴木理策がその活動の初期より関心を寄せ続けていたポール・セザンヌを起点に、現代の写真作品と絵画の関係を問う。
柴田は1949年東京生まれ。東京藝術大学大学院油画専攻修了後、ベルギーのゲント市王立アカデミー写真科に入り、写真を本格的に開始。日本各地のダムやコンクリート擁壁などの構造物のある風景を大型カメラで撮影、精緻なモノクロプリントで発表し、2000年代からはカラーの作品にも取り組み始めるなど、その表現の領域を広げている。
鈴木は1963年和歌山県新宮市生まれ。東京綜合写真専門学校研究科卒業。地理的移動と時間的推移の可視化を主題にシークエンスで構成した第一写真集『KUMANO』を1998年に刊行して以来、一貫して「見ること」への問題意識に基づき、熊野、サント=ヴィクトワール山、桜、雪、花、ポートレイト、水面といったテーマで撮影を続け、展覧会や写真集により作品発表を重ねている。
本展は6つのセクションで構成し、柴田と鈴木による新作・未発表作品約130点を含む約240点と、石橋財団コレクションからセザンヌの作品をはじめとする約40点、計280点を超える作品を展示。セザンヌだけでなく、柴田は藤島武二やアンリ・マティス、ピート・モンドリアン、いっぽう鈴木はギュスターヴ・クールベやクロード・モネ、ピエール・ボナールといった絵画の視点を織り交ぜることで、両作家が「写真」を通じて提示する、作品の特異性とその魅力を紹介する。