広川泰士氏 展覧会「時のかたち」
「どうしてこういう形になるのだろうと、つくづく見入ってしまう。まるで意志や感情を持っているような枯葉の造形は、一つ一つ実に個性的で二つと同じものがない。まだ青々と樹木の一部として機能している時は、ほとんどみな同じような色や形で特別個性などは見当たらない。ただひたすら樹の栄養器官の一つとして、行儀良くお務めを果たしているように見える。ところが、ひとたび枝から離れると全く別物になる。まるで樹という大きな社会の、厳しい決まり事で縛られた集団生活から解放され、思う存分自我を主張しながら、我が儘放題に姿を変えて、好きな場所へ飛んで行ったり、動きまわっているように見える。枝から離れた瞬間、死なのかといえば、枯葉を見るかぎりそうではないように感じられる。次第に乾き、硬く、脆くなり、やがて微塵に、または湿気を帯び、腐爛し、蕩け、次代の養分になるべく次のステップへ移行する。この刹那の姿は、動物と植物の隙間を超えてユーモラス、グロテスク、妙に色っぽくと、刻々形を変化させながら強烈なキャラクターを発散している。
樹木は、地上にある幹や枝と同量の根を地下に伸ばしている。これらの相互作
用で落葉と発芽を繰り返しながら生長している樹木の働きや形を、祖先から子々孫々、過去・現在・未来へと続く生命の形態と見立てるならば、現世を生きる「私たち個々の生」と個々の「葉」が重なる。自然の循環の輪は、遠い過去から未来まで、無数の(今)という瞬間で繋がっている。生命もまた、水のように姿を変えながら、その輪の中を、ずっと巡って行くのだと思う。」
(時のかたち:広川泰士)
6月11日(土)15:00〜16:00「山下裕二 x 広川泰士トークイベント at emmy art +」(定員20名:予約制)
本展覧会開催に伴い、美術史家・山下裕二氏をお招きして広川泰士氏との対談トークイベントを開催いたします。
ご予約は6月10日(金)までにinfogallery@emmyart.jpまでお問い合わせください。定員になり次第、締め切らせていただきます。
広川泰士
Taishi HIROKAWA
広川泰士(1950 -) 神奈川県逗子市生まれ。74年よりフォトグラファーとして活動を始め、ポートレートとや広告などのコマーシャルな分野で活躍する一方、ライフワークとして長期間のプロジェクトをベースににした作品制作に精力的に取り組む。これまで”時間”をテーマに無限の時間と宇宙の広がり、地球の風景や自然を映し出した作品を生み出し、世界各都市での個展、美術展への招待出展多数。 作品集に『sonomama sonomama』、『STILL CRAZY』、『TIMESCAPES −無限旋律−』など。 講談社出版文化賞、ニューヨークADC賞、文部科学大臣賞、経済産業大臣賞、日本映画テレビ技術協会撮影技術賞、A.C.C.最優秀撮影賞、他受賞。サンフランシスコ近代美術館、フランス国立図書館、プリンストン大学アートミュージアム、東京都写真美術館、神戸ファッション美術館他で作品が収蔵されている。
- 主催・会場:
- emmy art + (東京都中央区銀座6-3-2 ギャラリーセンタービル2F)
- 開廊時間:
- 火曜日 - 金曜日(日、月休廊)12:00 - 19:00 土曜日12:00-18:00