吉野英理香氏 展覧会 「WINDOWS OF THE WORLD」

amanaTIGPでは、11月12日(土)から12月10日(土)まで、吉野英理香展「WINDOWS OF THE WORLD」を開催いたします。amanaTIGPでは4年ぶり4度目、2018年の第34回写真の町東川賞新人作家賞、第18回相模原市総合写真祭フォトシティさがみはら「さがみはら写真新人奨励賞」受賞後初の個展となる本展では、2017年以降に撮影された作品群より17点を展示いたします。
ここ数年で急速に遷移した生活様式の中でも変わらぬ写真行為を継続してきた吉野は、この度発表する作品群のキーワードを、今の自分の表現や自分自身に近いスピリットを感じたという楽曲から引用しました。
“The Windows of the World”は、アメリカの歌手ディオンヌ・ワーウィックが、作詞家ハル・デヴィッド、作曲家バート・バカラックのプロデュースにより1967年に発表した曲のタイトルです。
琴のような弦楽器とフィンガーシンバルを使い、窓に当たる雨粒の音をイメージした、しっとりと奥行きのある曲に仕上げられています。
後年バカラックは自身のサウンドメイキングについて、「耳に優しいかもしれないが、簡単なものではない。そのため、このような「曖昧さ」は、「曖昧さ」そのものである」と語っています。
社会が複雑化し閉塞感が日々増していくなかで、改めて個人と世界のバランスの関係性について思いを巡らせたときに、この曲から感じるニュアンス・空気感を大切にしたコンポジションに強く心を打たれました。
瞬きと共に消えてゆく瞬間を反映する鏡のなかでの語りは、社会へのアティチュードの差異によって本質的なことを問いかけているようでもあります。
ファインダーから見る光景は、私にとって世界を知り得るための窓です。
世界の窓と窓にプリズム色の光が満ち溢れることを望んでいます。
2022年9月 吉野英理香
ありふれた日常風景の転瞬をファインダー越しの純粋な眼差しをもって綽々と切り取ってきた吉野の写真群は、刹那的な瞬間を写真というメディウムによって時間を永遠に閉じ込めることで独特な重力を漂わせます。静けさと力強さの調和をそなえた作家作品特有の佇まいは、「The Windows of the World」が奏でるメッセージと吉野の共鳴によってより成熟されました。ストリートスナップの手法を汲みつつも、花の属名でもある自身の名が記されたページと共に鮮やかな花冠を映しこんだものや、鏡の中の景色を覗き込んだものなど、そこには吉野自身の意図が介入しています。その作品世界には、絶えず変化している現代に点在する隔たりの数々を想起させる一方で、世界の様々な出来事へ容易にアクセスできるようになり、自己と他者の境界線が曖昧になった社会で生きる私たちがつくりあげていく、未来への麗らかな希望の旋律が響いているようです。
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会期: 2022年11月12日(土) – 12月10日(土)
会場: amanaTIGP
106-0032 東京都港区六本木5-17-1 AXISビル 2F