奈良原一高氏 展覧会「境界をみつめて 奈良原一高写真展」

奈良原は福岡県大牟田市に生まれ、父の仕事の都合で名古屋、金沢、鳥取、松江などを転としながら高校までを過ごします。早稲田大学大学院で美術史を学び始めた1954年春、九州周遊の旅の途中に長崎県端島(軍艦島)と鹿児島県黒神村を訪れ、そこで暮らす人々の生活や土地の様子を撮影します。そして1956年、「人間の土地」と題した個展にて発表されたこれらの写真は、従来の写真の概念を大きく揺さぶります。個展は同世代から大御所の写真家に至るまで賛否両論の議論を巻き起こし、写真家としての衝撃のデビュー作となりました。その後の奈良原は、日本からーロッパに居を移した経験からもう一度日本の伝統文化を見つめ直す「ジャパネスク」や、アメリカに渡り現地の風景を捉えた「消滅した時間」など、物事や世界の境界に立ち、主観的な視点から対象を捉えた作品を発表し続けました。本展では奈良原の代表的な5つのシリーズから彼のまなざしが捉えた世界を体験し、写真家・奈良原一高の軌跡を振り返ります。