植田正治氏 展覧会「植田正治のアプローチ〈人物〉」

〈綴方・私の家族〉として発表された弓ヶ浜での家族写真や砂丘での演出写真など、もっとも植田らしいイメージの数々は、植田が地元、境港で写真館でのスタジオ撮影の延長線上にあるように思えてなりません。広々とした砂浜や砂丘は植田にとっては、天然のスタジオであり、写真表現の実験の場でした。「演出」と呼ばれる写真家の意図による人物の配置やポーズづけも、写真館での植田の経験がベースになっているように感じられます。
そんな植田も、1950年代はじめリアリズム運動の中で、人物が撮れないと語っていたことがあります。植田にとって写真とは何かを自問しながら、その後「自分の写真」を模索していったのでしょう。1950年代末、植田は周囲に、「自分の今後進むべき道を再認識した」と語っています。その後のシリーズ〈童暦〉、〈小さい伝記〉をみると、多くの人物写真であふれています。植田は試行錯誤のなかで、自身の写真の原点に立ち返り、「撮ること」、そして「撮られること」とは何か、さらに、カメラを意識させ正面から撮るという方法論が、植田にとっての明確な人物へのアプローチとなっていきます。カメラを意識させずに人々の自然な姿を撮ることもひとつの方法ではありますが、撮影という行為において、カメラを意識させることもある意味、「自然」と考えたのでしょう。向けられたカメラに、被写体の人々がどのように反応するか、撮られることに不慣れな人々の素朴でストレートな反応をそのままにとらえることも、植田ならではのアプローチであり、作品の魅力ではないでしょうか。
パパとママとコドモたち 1949年
少女たち 1950年
砂丘人物 1950年頃
シリーズ〈童暦〉より 1959-70年
シリーズ〈小さい伝記〉より 1974-85年
シリーズ〈白い風〉より 1980-81年
※障害のある方とその付き添いの方(1名まで)は半額となります
※いずれも証明できるものをご持参ください
〒689-4107 鳥取県西伯郡伯耆町須村353-3