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東川町国際写真フェスティバル Offcial blog

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白石ちえこ氏 写真展 「北北東」


東川賞受賞作家 展覧会のお知らせ

巷房にて、白石ちえこ氏の写真展が開催中です。


北北東

白石ちえこ氏 写真展 「北北東」_b0187229_14505986.jpg
©白石ちえこ


以下リンクより

凍結した汽水湖を渡る鹿の群れに誘われ、2015年から真冬の道東に通った。
北の大地には野生的な自然が溢れていて、その大きな力に魅せられるように、二年ぶりに根室を軸に道東を旅した。

四月。根室に着いた翌朝には雪が降った。冬から春へ、なごりの雪。

川や湖の氷は溶けて、大きな水の流れが生まれていた。
大地から水がしみ出し、透明な空気の中で無数の小さな流れをつくり、土はうごめいていた。

森や草原で、かすかに草をかきわけ、踏み固められてできたけものたちの小径を見つけた。
まだ凍土がとけきらない頃には、森をくぐり、その小径をたどって湿原を抜け、水辺までたどりつけた。

根室の語源はアイヌ語の「ニムオロ」、樹木の繁茂するところの意味だという。
かつてこの地はシマフクロウが巣をつくれるほどの大きなうろを持つ樹々が生い茂る、深い森だったのだろう。
いまは大きな樹は見当たらないし森も減ったが、昔から変わらず人を寄せつけない広大な湿原は残っている。
歴史の中で大地の開拓や開発が進み、人の手が入り込んできてはいるものの、道東の湿原には力強い自然の風景があった。

大きな自然の中に人が入り、交わり暮らす。この北の大地には、人間が自然環境と交差しだした、はじまりの風景のようなものを感じるのだった。
ここでは動物も人も同じように、自然の中にぽつりぽつりと姿を見せた。
一見何も無いような風景に見えるが、そこに惹かれてまた道東を訪ねてしまうのだった。

「ここへ畑起こしてもいいかあ。」
「いいぞお。」森が一斉にこたえました。
みんなは又叫びました。
「ここに家建ててもいいかあ。」
「ようし。」森は一ぺんにこたえました。

(『狼森と笊森、盗森』宮沢賢治 )

土地にまだ名前のなかった頃。

道東を旅していると、どこからか風にのって、こんな声が聴こえてくるのだった。

白石 ちえこ



******************************

会期:2023年7月31日(月)- 8月12日(土)
日曜休廊
時間:12:00-19:00(最終日は17:00まで)
入場料:無料

会場:巷房 3F、地下1階、階段下(Link
〒104-0061
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル 3F+B1F




by higashikawa_blog | 2023-08-03 14:52 | 受賞作家関連
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