立木義浩氏 写真展「肖像/時」
写大ギャラリーでは、東京工芸大学創立100 周年を記念して、本学の卒業生でもある写真家・立木義浩写真展を開催いたします。
立木義浩は1965 年に『カメラ毎日』の巻頭56 ページにわたって掲載された「舌出し天使」で写真家として華々しくデビューします。1969 年にフリーランスとなり、ヌードを含む女性を中心にした多くの作品を発表する一方、広告・雑誌・出版など幅広い分野でさまざまな写真を撮影し、現在まで精力的に制作を続けています。
写真家としての立木の特徴はジャンルの幅の広さでしょう。その姿はあたかも特定されることを拒否するかのようにさえ映ります。そして、なによりつねに時代に敏感であることです。時々の流行、風俗、風潮、社会状況といったものに反応しながら制作を続けています。だからでしょうか、あたかも時代とともに走り続けている、という印象を抱かせもします。本人の言葉を借りれば「雑居性」いう言葉に集約されるのかもしれません。あるいは「自分の撮るものが、『作品』だと考えたことがない。後世に残そうと、思ったこともない。好きなものを、好きなように撮る。自分で納得がいくように撮る」(『東寺』集英社、1998 年)という発言の通り、つねに好奇心の向くままに写真と向き合ってきた姿勢に、立木の写真家としてのスタンスと意思の一端をみることができます。
60 年近いキャリアの中で撮られた作品は膨大です。その中から今回の展覧会では、ポートレイトに焦点を当てるかたちで作品を選出しました。代表作である「舌出し天使」はもとより、それ以前、20 歳(1957 年)で雑誌『アサヒカメラ』に掲載された幻のポートレイト、40 代の代表作であるドキュメンタリー『MY AMERICA』、東寺の国宝を含む仏像、東日本大震災の被災地で撮られた老人たちの肖像、さらには若い学生たちをモデルに近年撮影された作品、そして写真館に生まれた立木の原点を感じさせる親子の肖像などから構成されています。有名、無名、聖、俗、新、旧が混在する今回の展示は、独自の作家性を確立し、いまなお進化し続ける写真家・立木義浩を改めて展観する試みでもあります。
(企画構成 小林紀晴)
立木 義浩(たつき よしひろ, 1937年―)
徳島県に生まれる。生家は明治より続く写真館を営む。1958年東京写真短期大学(現・東京工芸大学)写真技術科卒業。その後、広告会社アドセンター設立時にカメラマンとして参加。1965年に『カメラ毎日』の巻頭56ページにわたって掲載された「舌出し天使」でデビュー。1969年フリーランスとなり、女性を中心とした多くの作品を発表する一方、広告・雑誌・出版など幅広い分野で活躍する。1965年に第9回日本写真批評家協会新人賞、1987年に第18回講談社出版文化賞写真部門を受賞。1979年から現在まで東京工芸大学のフォックス・タルボット賞の審査員(2022年度より審査委員長)も務めている。
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