吉田志穂さん 展覧会「この窓から見えるものが変わったとしても」
写大ギャラリーでは、東京工芸大学創立100 周年を記念して、本学の卒業生でもある写真家・吉田志穂写真展「この窓から見えるものが変わったとしても」を開催いたします。
吉田志穂は本学在学中(4年次)の2014年に、数多の著名な写真家を輩出した写真コンテスト「第11回写真 1_WALL」にてグランプリを受賞して、華々しくデビューしました。2017年には、写真作品が選ばれることは稀である現代美術コンテスト「第11回shiseido art egg」に入選を果たしました。その後も、数々の個展や国内外の美術館での企画展、写真フェスティバルに招聘され、2022年、写真界の芥川賞と言われる第46回木村伊兵衛賞を受賞しました。今では、写真界のみならずアート界からも注目される若手を代表する写真家です。
吉田は、アナログとデジタル両方のプロセスを融合した制作方法が特徴的です。また展示空間を含めて作品とみなす手法、インスタレーションを得意としています。代表作「測量|山」では、インターネットにて撮影する場所を探して、その過程にて見つけた地図や航空写真などのイメージを撮影します。その写真を持って、実際の場所に向かいます。その場に降り立った時の感情や感覚を元に、眼前の光景と持参した写真などを様々な方法で組み合わせていきます。そして、アナログとデジタル両方のプロセスを融合することでしか生まれない、実際には存在しない風景を作り上げます。
「この窓から見えるものが変わったとしても」は解像度をキーワードにした新作です。解像度とは、画像を構成する密度のことで、その密度が高いほど高画質になります。最近では、物事の理解や思考が明確な人に対して、あの人は解像度が高い、といった使い方もされています。あらゆる機器は高解像度を目指して開発されており、多くの人はそれを望みます。しかしデジタル全盛の現在において、フィルム写真に独特な味を感じたり、わざと低解像度の古いコンパクトデジタルカメラを使用したりする若者も多く見受けられます。高解像度のものに違和感を覚える、または低解像度のものに愛着を感じる人も少なくありません。
本作では、まず、高解像度のデジタルカメラで撮影した写真を数メートルの大きなプリントにします。それをあらゆる解像度、機種のカメラで再度撮影しました。使用したカメラは、8×10inchのシートフィルムを使用する大型カメラから、「写ルンです」や2005年製造のコンパクトデジタルカメラなど多岐に渡ります。同じ写真を撮影しているのにも関わらず、カメラの機種によって完成する写真は大きく異なります。カメラによってファインダーという窓は異なり、そこから見えるものも変化します。そのどれにも個性と魅力があると吉田は考えます。
本展は、「この窓から見えるものが変わったとしても」を中心に、「測量|山」などの代表作をご覧いただきます。木村伊兵衛賞受賞後、初の新作を交えた個展です。
(企画担当 勝倉崚太)
吉田 志穂(よしだ しほ,1992− )
千葉県に生まれる。東京都を拠点に活動。2015年東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。2022年第46回木村伊兵衛賞受賞。主な展覧会に、2021年「記憶は地に沁み、風を越え 日本の新進作家 vol.18」(東京都写真美術館)、2021年「あざみ野フォト・アニュアル とどまってみえるもの」(横浜市民ギャラリーあざみ野、神奈川)、2020年「TOKAS-Emerging 2020」(トーキョーアーツアンドスペース本郷、東京)、2018年「Quarry / ある石の話」(ユミコチバアソシエイツ、東京)など。2014年「第11回写真 1_WALL」グランプリ受賞、2017年「第11回 shiseido art egg」入選、「Prix Pictet Japan Award 2017」ファイナリスト。
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2023年11月10日(金) 〜 2024年1月31日(水)
10:00〜19:00
休館:木曜日、日曜日、祝日
2023年12月27日(水)~ 2024年1月4日(木)2024年1月12日(金)〜1月14日(日)
〒164-8678 東京都中野区本町2-4-7 5号館(芸術情報館)2F