展覧会 BankART Life7 「UrbanNesting:再び都市に棲む」
BankART1929はこれまで横浜トリエンナーレ開催毎に、あわせて大規模な連携企画展「BankART Life」を開催し、3年に一度の総括とその後の指針を示してきました。BankART活動開始から20年のタイミングで開催する7回目の「BankART Life」のタイトルは「UrbanNesting:再び都市に棲む」です。
2004年、横浜市が推進する創造都市構想のリーディング事業として始まったBankART1929は、歴史的建造物や港湾倉庫などの遊休施設を文化芸術に活用することによって街ににぎわいをつくることをミッションに、館内外問わず様々な事業を展開してきました。またBankART自身も、都市の変容と呼応して何度もその棲家を移動せざるをえなくなり、引っ越しを繰り返し、様々な危機に直面しながらも活動継続して現在に至ります。「都市に棲む」というフレーズは、そんなBankARTのあり方としてたびたび使われてきましたが、この「棲む」という言葉には単に居住するという意味を超えた動物的な感覚が含まれています。野生の思考で都市を見つめ、自らの場所を発見し獲得していく喜び。それと並行して都市の中に潜むさまざまな問題や課題に対して真摯に対峙し、不確実さを引き受けながら、自由自在に形を変えてそれでも都市に棲み続けること。都市に棲む鳥たちや虫たちが、明るい日差しに戯れる日もあれば風雨の吹き荒れる中それぞれの巣で身を寄せ合いじっと耐える日もあるように、嵐の後の雨に洗い流された瑞々しい空気が、都市の見え方を大きく変えてみせてくれるように。
「都市」のような捉えどころのない大きなものについて考えるとき、個々人が捉えることのできる都市像は生物における環世界のように自分の立ち位置から独自の視点でみたものでしかなく、自分に見えるものは常に部分でしかありません。しかし、自分にしか見えない都市を地図にして誰かに渡したら、その人は同じ都市を違う都市のように巡ることができるかもしれません。様々な地図の無数の交換を繰り返す中で互いを更新し創造していった先には、どんな都市が立ち現れるでしょうか。
今回の会場となる「BankART Station」は、みなとみらい線「新高島駅」地下1階に広がる大空間であり、外部空間への結節点でもあります。この「BankART Station」を起点として、みなとみらい21地区、関内地区、ヨコハマポートサイド周辺地区の3つのエリアの日常空間に作品を展開します。さらに多様なガイドによる「ツアー」によって、さまざまな視点から都市を再び訪れ直してみたいと思います。
鷹野隆大
『光の欠落が地面に届くとき 距離が奪われ距離が生まれる』および『毎日写真』より
つかめそうで掴めない、さわれそうで触れない。
不在ではないが、実在でもない。
存在に付随しているにすぎないそれは、
じっと眺めていると自ら生命をもっているように見えてくる。
この世界の向こう側で生きているかのように。
わたしは触れることのできないそれらを、
時々カメラで捕えてみる。
🅗 みなとみらい21中央地区52街区開発計画 工事用仮囲い(キング軸)
西区みなとみらい5-1-2他
鷹野隆大
たかの・りゅうだい
1963年生まれ。2006年 セクシュアリティをテーマにした写真集「IN MY ROOM」で第31回木村伊兵衛写真賞。2011年には日本特有の街並みを集めた写真集「カスババ」を、2016年には影をテー マにした写真集「光の欠落が地面に届くとき 距離が奪われ距離が生まれる」を発表。性や都市、光と影など身近なものを題 材にしながら、制度化された視覚の外側を模索している。2021年、国立国際美術館(大阪)にて個展「毎日写真1999-2021」を開催。2022年、第72回 芸術選奨 文部科学大臣賞受賞(美術部門)、第38回 写真の町東川賞 国内作家賞受賞
石内 都
絹の夢-silk threaded memories
「絹のゆくえ」
絹をまとうことは日常的にほとんどなくなってしまった。絹そのものの存在は薄れるばかりである。日本の近代を支えた絹産業を担っていた町は、栄枯衰退の歴史をたどっている。その中で群馬県に現在も稼働している絹の製糸工場と、屑まゆを製糸して化学染料で染め、平織した廉価な銘仙のきものの写真を、絹とゆかりのある横浜に展示します。
共催:横浜トリエンナーレ組織委員会
🅐 みなとみらい線馬車道駅コンコース
横浜市中区本町5-49(B2(改札階)改札~出口1~2方面間の大空間)
石内 都
いしうち・みやこ
1947年群馬県桐生市生まれ。神奈川県横須賀市で育つ。1979 年に「Apartment」で女性写真家として初めて第4回木村伊兵衛写真賞を受賞。2005 年、母親の遺品を撮影した「Mother’s」で第51回ヴェネチア・ビエンナーレ日本館代表作家に選出される。2007年より続けられている被爆者の遺品を撮影した「ひろしま」も高く評価され、国内各地の美術館のほか、海外でも作品を発表している。2013年紫綬褒章受章。2014年にはハッセルブラッド国際写真賞を受賞。その作品は、横浜美術館をはじめ、東京国立近代美術館、東京都写真美術館など国内主要美術館、ニューヨーク近代美術館、J・ポール・ゲティ美術館、テート・モダンなど世界各地の美術館に収蔵されている。
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2024年3月15日[金]–6月9日[日]
11:00–19:00(BankART Station)
休業:木場日[4/4、5/2、6/6を除く](BankART Station)
BankART Station+周辺各所(関内地区、みなとみらい21地区、ヨコハマポートサイド周辺地区)