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東川町国際写真フェスティバル Offcial blog

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大橋英児氏 写真展「Your eyes are our eyes-囚人道路-」


東川賞受賞作家 展覧会のお知らせ

札幌市モエレ沼公園ガラスのピラミッドにて、大橋英児氏の写真展が開催中です。


Your eyes are our eyes-囚人道路-

大橋英児氏 写真展「Your eyes are our eyes-囚人道路-」_b0187229_08365923.jpg
©大橋英児


以下リンクより

北海道ではササ藪を歩くことを「漕ぐ」と表現する。この言い回しは実際に入った者でなければ、その意味は理解できない。というのも北海道でササと総称されている通称ネマガリダケ(チシマザザ)は根元が弓のようにしなり、歩く者の足を絡め取る。そのため前進が困難となり、「漕ぐ」という表現が生まれたのである。ササ類は道内の総面積の約60%、森林面積の90%を占め、そのため「ササと巨根木の闘い」といわれ、明治期の北海道開拓を著しく困難にした要因の一つであった。

この開拓の背景には、ロシアの南下政策などの国際的な事情があったとされ、加えて「農業移民」「士族移民」「漁業移民」、防衛を兼ねた「屯田兵」、さらには強制的に送られた「囚人」たちがここには存在した。特に囚人労働は過酷であり、道内幹線道路の約55%が囚人によって建設されたことはあまり知られていない。たとえば明治24年(1891年)、網走から北見峠に至る163kmの中央道路開削では、1,150名中216名が命を落としたとされる。このような史実の背景として、当時の政府要職・金子堅太郎は「囚人を使えば建設費が節約でき、死ねば監獄費も減る」と記した『北海道三県巡視復命書』を提出したとされる。そして政府は囚人労働を正当化し、徒刑や流刑を新設してまで労働力を確保し、思想犯を含む多くの人々が苛酷な労働に従事させられた。しかし一方で、釧路集治監初代典獄・大井上輝前や留岡幸助、原胤昭ら、キリスト教に基づき囚人の人権を擁護した人々の存在もあった。彼らは同志社の流れを汲み、北見周辺には坂本龍馬の甥・坂本直寛らが北辺の地にラストフロンティアを作ろうという理想を追って入植したことも特筆される。

ここで開拓者の末枝として過去を辿ってみると、私自身の祖先もまた、この開拓の一端を担っていた。祖父は明治11年、徳川慶勝に従い愛知から八雲へ、さらに稚内市の浜勇知へ入植した。祖父の家はまだ電気も断熱もない家で、布団の襟に霜がつくほどの厳しい環境を私は幼少期に体験した。それは思い出として残っているが、開拓民としてこの地を開墾した祖先たちにとっては、生死を分けるほど苛烈であったに違いない。ただその中で培われた精神性は、過酷な自然の中で「誰かに期待されている」という思いを支えに生き抜く力であったと考える。これはヴィクトール・フランクルが『夜と霧』で説いた「心の拠り所を持つ者が生き残る」という洞察とも響き合う。このことは現代社会において拠り所を見失いつつある私たちが学ぶべき姿勢である。

こうして祖先の軌跡を辿ることは、自己のアイデンティティを確かめ、今を生きる意味を再確認することにつながる。私はその追体験を「まなざしの共有」に見出し、北海道の至る所に存在するササに注目した。本展では、ササを題材とした作品を展示する。作品には“The13”と番号が付されているが、これは中央道路開削地に設けられた13の仮獄(仮の監獄)を示し、数字はその緯度経度を指し示す。

このように仮獄跡は、現在はただのササ藪に過ぎない場所も、かつては鎖につながれた囚人たちが労働し、命を落とした跡である。そしてそのササを写真として見つめることは、鑑賞者自身の体験と結びつき、新たな価値の創出へとつながるだろう。さらにはにおいが過去の記憶を呼び戻す作用があると言うことで、パフューマーの楠尚子との協働により、ササの香りを会場に再現する。そして嗅覚を手がかりに写真と記憶を結びつけ、「意図的想起」として記憶を可視化する試みを行う。


◎関連企画
①トークイベント
出演:タカザワケンジ(写真評論家)、関次和子(東京都現代美術館学芸員)、大橋英児(写真家)
開催日時:2025 年 11 月 30 日(日曜日)14:00-16:00
会場 : モエレ沼公園ガラスのピラミッド スペース 2(展覧会場内)
入場料:無料
詳細:https://moerenumapark.jp/20251130/

②現代写真フォーラム“写真史から辿る現代写真と北海道”
登壇者:清水穣(美術評論家・同志社大学教授)、酒井広司(写真家)、大橋英児(写真家)
開催日時:2025 年 12 月 7 日(日曜日) 14:00ー16:00
会場:モエレ沼公園ガラスのピラミッド スペース 1
参加料:500 円
詳細:https://moerenumapark.jp/20251207-2/

③ワークショップ「香りと記憶の交換―プルーストにはできなかったこと」
講師:楠尚子(パフューマー)
開催日 :2025 年 11 月 11 日(火曜日)
時間 :1回目 13:00-14:00 2回目 14:30ー15:30
定員:各回 8 名まで
会場 :モエレ沼公園ガラスのピラミッド スペース 1
参加料:2,000 円
詳細:https://moerenumapark.jp/20251111-2/


◎作家プロフィール
大橋英児  Eiji Ohashi | 写真家
1955年稚内市生まれ、札幌在住。京都芸術大学大学院修了(MFA)。2008年より自販機を題材とするシリーズ「Roadside Lights」を展開し、国内外で個展を開催。2020年からは新プロジェクト「Your eyes are our eyes」に着手。著書に『Roadside Lights』『Being There』などがあり、作品は札幌芸術の森美術館や東川文化ギャラリーに収蔵。2018年に写真の町東川賞特別作家賞を受賞するなど国際的に評価されている。
https://eijiohashi.com/jp



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開催期間 : 2025年11月11日(火)〜12月14日(日)

 ※毎週月曜日休館。ただし11/24(月)は開館し、11/25(火)休館。

開館時間 9:00〜17:00

開催場所 : 札幌市モエレ沼公園ガラスのピラミッド スペース2

入場無料

共 催 : 公益財団法人札幌市公園緑化協会








by higashikawa_blog | 2025-11-17 08:39 | 受賞作家関連
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